この記事でわかること
- 直播が“再評価”されてる理由
- 移植との違い
- 直播で失敗しやすいポイント
- 成功に近づく具体策
- 家庭菜園での「縮小版」やり方
なぜ今、直播が“古くて新しい”のか
北海道のタマネギは、昔は直播(種のまま畑に撒く)が主流でした。
でも戦後~機械化で移植が主役に。
それでも近年、加工・業務用需要の増加と、安定供給の難しさ(輸入増)が背景にあって、北海道でも直播が増えています。
直播は育苗が要らない分、初期投資と労力が軽くて導入しやすい。特に新規で面積を増やしたい地域で採用されやすいのが流れ。

直播と移植、いちばん大きい違いは「生育期間の短さ」
直播は播種が遅い分、どうしても生育期間が短い。
日長や温度で倒伏に向かうから、播種差ほど倒伏差は開かない結果、球肥大の余裕が少ない。
つまり、
- 球が太れない年が出やすい
- 収量の年次ブレが大きい
が直播の宿命。
逆に、直播の良さは
- 育苗不要でコストが軽い
- 春干ばつの影響が比較的小さい
あたり。

直播のコスト感:生産費は移植の75〜80%が目安
直播は育苗施設・資材・労力が不要なので、全体コストは下がりやすい。
ただし、収量がブレると「kgあたりコスト」が一気に悪化するので、結局の勝負はここ。
直播は「安く作る」より「ブレを抑えて、最低ラインの収量を守る」が大事。
直播で勝つための実践ポイント(農家向け)
1) 圃場は“排水が正義”
融雪期に停滞水が出る圃場は、播種が遅れて致命傷になりがち。
出芽直後の実生は弱いので、過湿で欠株が出ると挽回が難しい。
- 秋に心土破砕などで排水性改善
- クラストが出やすい土は、砕土と鎮圧のバランスに注意

2) リン酸は“初期のエンジン”
タマネギは生育初期のリン酸要求が強い。新畑やリン酸が低い圃場は特に注意。
可能なら土壌診断して、必要な場合はリン酸資材で底上げ。
- 局所施肥(種子の下にリン酸)という考え方も有効
- 種子と肥料が混ざると出芽に悪影響が出るので距離を確保
3) 播種時期:できるだけ4月中に終わらせる
直播は遅いほど球重も収量も下がる。
目安として、4月中に終える意識。遅くとも5月上旬まで(地域で調整)。

4) 播種密度:球肥大を殺さないギリを狙う
直播は球肥大不足になりやすいので、球数確保が重要。
ただ、密植に寄せすぎると平均球重が落ちる。
目安イメージ
- 粒数はおおむね 3,800〜4,200粒/aあたりを基準に、欠株を見込んで調整
- 条数や株間設計で「球数と球重のバランス」を取る
5) べたがけ:出芽と初期を助けるが、万能ではない
不織布べたがけで
- 地温UP
- 出芽が早まる
- クラスト軽減
が期待できる。
ただし、条件次第では増収がハッキリ出ない年もある。干ばつ+高温年は障害リスクもあるので、「やるなら期間と天気を見て」。

直播最大の敵:雑草
直播は使える除草剤が限られて、処理適期もシビア。
結局、土壌処理+中耕+手取りの合わせ技になりやすい。
- 播種後の土壌処理を丁寧に
- うね間の機械除草を早めに回す
- 繁茂後は地獄なので、その前に止める
農薬は必ずラベルを確認

害虫で一発終了しがち:タマネギバエ
直播は加害時期に作物が小さく弱いので、被害が大きくなりやすい。
欠株が増えると、密度設計そのものが崩れて収量が落ちる。
- 土壌処理(登録と地域適用を必ず確認)
- 発生しやすい圃場の把握(連作・周辺環境)
- 初期の欠株確認を早めに

収穫・乾燥:直播は「倒伏が遅れる年」を前提に動く
直播は倒伏が遅れがち。
地域によっては8月以降の降雨や10月の乾燥不良が絡んで、収穫判断が難しくなる。
- 倒伏揃い期から1〜3週間を目安に根切り
- ただし遅れすぎると、天候で詰むので「遅くともここまで」ラインを持つ

農家ほど機械も薬剤も使わない前提で、家庭菜園なら勝ち筋はシンプル。
家庭菜園での最優先はこれ
- 水はけ
- 播種は早め
- 雑草は初期で潰す
- 玉ねぎ肥料+初期のリン酸
- 防虫ネット
種(玉ねぎ)
肥料
農薬
農薬はラベルを確認
まとめ:直播は「圃場・早播き・初期管理」でほぼ決まる
直播タマネギはコスト面の魅力がある一方、球肥大と収量のブレが出やすい。
だからこそ、最初に押さえるべきはこれ。
- 排水の良い圃場
- 播種を遅らせない
- リン酸で初期の立ち上がり
- 雑草は初期で止める
- タマネギバエ対策
この5つを守るだけで、「初年度で心が折れる確率」はかなり下がる。
農家の方は先を見てチャレンジ!
家庭菜園の方も試しに!
美味しい作物を作りましょう!
おまけ:記事に入れると強い「チェックリスト」(コピペ用)
- [ ] 圃場は融雪期に停滞水がない(排水対策済み)
- [ ] 土壌診断 or リン酸不足の当たりを付けた
- [ ] 播種は適期の早い側で計画した
- [ ] 砕土・鎮圧・播種深度(2〜3cm)を守る
- [ ] 雑草対策は「土壌処理+中耕+手取り」を前提にしている
- [ ] タマネギバエ対策を入れている(特に初期)
- [ ] 倒伏遅れ年の収穫判断ラインを決めた
参考文献・出典
農業技術大系 野菜編 第8-2巻 タマネギ
