有機+化成の“いいとこ取り”で収量と品質を両立する考え方

イモ
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有機+化成の“いいとこ取り”で収量と品質を両立する考え方

農業の現場で、永遠に終わらない議論があります。
「有機がいい!」「いや化学肥料が正解!」という問題です。

こんにちはチーパパです。

ただ、結論から申し上げますと、どちらか一方が常に正しい、ということはありません。
肥料は思想ではなく、道具です。大切なのは、

  • 何を優先するのか(収量・品質・土づくり・作業性)
  • いつ効かせたいのか(低温期・高温期・生育ステージ)
  • どんな土なのか(pH・水はけ・地力・病害リスク)

これを踏まえて、目的別に使い分けることです。ここができると、一気に“プロっぽい設計”になります。

1. 有機肥料の強みは「土を育てる効果」にあります

有機肥料(堆肥・油かす・魚かす等)は、単なる栄養補給にとどまらず、土そのものの性能に影響します。

有機の主なメリット

  • 団粒構造ができやすい
    土がほぐれ、通気性・排水性・保水性が整いやすくなります。
  • 微生物のエサになる
    土の生物性が豊かになり、根が伸びやすい環境を作りやすくなります。
  • 長期的に地力が積み上がる
    長期連用の試験では、無機単用よりも有機併用で土中の全炭素・全窒素が増え、長期的な増収傾向が報告されています。

有機の注意点(ここが落とし穴)

  • 効き方が温度に強く左右されます
    微生物が分解して初めて効くため、低温期は効きにくく、高温期は効きが強まりやすいです。
  • 成分が“読みにくい”
    同じ堆肥でもロットや熟度で効きが変わります。設計は「だいたい」でやるとブレます。

2. 化学肥料の強みは「狙って効かせる精密さ」です

化学肥料(無機肥料)は、作物が吸える形で成分が入っているため、設計がしやすいのが最大の強みです。

化学の主なメリット

  • 効かせたい時に効かせられる(追肥・生育補正が得意)
  • 低温でも効きやすい(微生物依存ではない)
  • 成分が一定で計算しやすい(再現性が高い)

化学の注意点

  • 土の“体力”は増えません
    化成だけで回すと、有機物が増えにくく、土が締まりやすい圃場では限界が出やすいです。
  • 高温・乾燥時に濃度障害(塩類ストレス)が出やすい
    土壌水分が少ない時期はECが上がりやすく、根が弱る要因になります。

3. 実は多数派の正解は「有機+化学のハイブリッド」です

現場で安定している方ほど、だいたいこれです。

  • 有機で土の土台(物理性・生物性)を整える
  • 化成でタイミングと量を精密に合わせる(不足分の補正)

この“役割分担”ができると、年のブレが減ります。

4. ジャガイモで特に大事な注意点:堆肥と「そうか病」

ジャガイモは、有機資材の入れ方でそうか病リスクが動きやすい作物です。

  • 堆肥や一部有機資材の施用で、土壌の酸度条件が変わり、そうか病が増える方向に働くことがあります。
  • そうか病が出やすい圃場では、作付け直前の粗大有機物すき込みは避け、収穫後に回すなどの工夫が安全です。

「土づくりをしたい」ほど、病害リスクもセットで管理した方が失敗が減ります。

5. 「引き算施肥」を知らないと、有機は事故りやすいです

堆肥や有機資材を入れるなら、化学肥料を減らす(引き算)が基本です。
入れた分を無視して化成をいつも通り入れると、過剰になりやすいからです。

例として、デンプン原料用ジャガイモのケースでは、
堆肥3t/10aを施用した場合、窒素を3kg/10a減らす
といった「減肥目安」が示されることがあります。

さらに堆肥はカリの供給源として強く、
堆肥3t/10aでカリ肥料12kg分相当を賄える、という考え方もあります。
この場合、化成カリをそのまま入れると“盛りすぎ”になりやすいです。

6. 高温対策の視点:暑い年ほど「有機が暴れやすい」「化成は濃くなりやすい」

ここ、最近かなり重要です。
近年高温化ですからね”

高温年に起きやすいこと

  • 有機:分解(無機化)が進みやすく、想定以上にチッソが出る
    → つるが茂りすぎる、枯れが遅れる、品質が落ちる(特に加工用は事故に直結)
  • 化成:乾燥で土壌水分が減ると、肥料濃度(EC)が上がりやすい
    → 根が弱り、吸い上げが落ちる、結果的に肥大が止まる

高温年に効く“現実的な設計”の方向性

  • 後半にチッソを残さない設計(分施や効き方の見直し)
  • 水分管理を前提に考える(マルチ、畝形、灌水が可能なら優先順位高)
  • カリの扱いを丁寧にする(過不足で品質に響きやすい)
  • 塩素を嫌う用途では、資材選びに注意(品質やでん粉価に関わるため)

「高温対策」は遮光や灌水だけではなく、肥料の効き方を“暑い前提”に寄せるのが効きます。

有機質肥料と化学肥料のハイブリッドの判断も検討!!

7. 目的別:迷った時の判断基準

「どっちがいいですか?」ではなく、目的で決めるのが最短です。

目的・状況 推奨 理由
地力を上げたい/土が硬い 有機(堆肥・有機質)+必要分を化成 土の物理性・生物性を整えつつ不足を補正
低温期・初期生育を確実にしたい 化学肥料中心 温度に左右されにくい
高温年で“効きすぎ”が怖い 有機は控えめ+引き算徹底/化学肥料も濃度注意 有機の無機化加速とEC上昇リスクがある
そうか病が心配 直前の粗大有機は避ける(時期を後ろへ) 病害リスクを上げない運用が必要
とにかく安定収量 有機で土台、化学肥料でタイミング調整 ブレを減らす王道

まとめ:有機と化成は「対立」ではなく「分業」です

  • 有機肥料は、土の体力(物理性・生物性・地力)を育てる道具です。
  • 化学肥料は、狙ったタイミングに、狙った量を効かせる道具です。
  • 安定するのは、たいてい 「有機で土台、化成で補正」 のハイブリッドです。
  • 高温年は、有機の分解加速と化学肥料の濃度障害に注意し、後半Nを残さない設計が効きます。

どちらも入っている肥料も判断材料に!
今のうちから高温対策始めていきましょう!

参考文献

『有機肥料・堆肥の成分と効き方』
『有機質肥料の特性と利用の基礎』(郡司掛 則昭 著)
『有機質肥料と無機質肥料での肥効と根・土壌』
『有機質肥料の施用と団粒形成・回流促進』(樋口 太重 著) 
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