イモはチッソを効かせるとダメ?どこまで本当かを“数字とタイミング”で整理します

イモ
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イモはチッソを効かせるとダメ?どこまで本当かを“数字とタイミング”で整理します

― つるボケ・比重低下・規格外を防ぎながら収量も取る窒素設計 ―

はじめに:「チッソ=悪」ではありません

こんにちはチーパパです。今回は馬鈴薯!
馬鈴薯でよく聞くのが、
「チッソを効かせるとダメ」
「増やすとつるボケする」
という話です。

ただ、現場の実感としては

  • チッソを減らすとイモが小さくなる
  • 収量は出たのに、でん粉価(比重)が落ちた
  • そもそも“多い”の基準が曖昧

このあたりがモヤモヤしやすいポイントです。

結論を先に言うと、窒素はなんだかんだ収量を決める主役です。
ただし、後半まで効かせると品質事故につながりやすいという性質があります。
つまり問題は「窒素の有無」ではなく、

効かせどころ(タイミング)と総量です。


1. 「チッソが多い」とはどのくらい?(判断軸は“吸収量”)

施肥量(kg/10a)だけで「多い・少ない」を判断すると事故ります。
理由は簡単で、畑には見えない窒素(地力・残渣・堆肥)が存在するからです。

そこでおすすめの考え方は、目標の窒素吸収量を先に置く方法です。

■ 目安:最大生育期の窒素吸収量(10aあたり)

一般的な目標レンジの目安として、
11〜14kg/10a程度(用途・品種・土壌で調整)
が一つの基準になります。(元肥と追肥とかを合わせた数字ね)

このレンジを大きく超える設計になっているときは、
収量は伸びても、以下のリスクが上がりやすくなります。

  • でん粉価(比重)の低下:イモ重が増えても、濃度が下がりやすい
  • 変形いも・規格外増:肥大バランスが崩れる
  • 病害リスク増:過繁茂で疫病・軟腐病などが出やすい
  • 食味低下(生食用):えぐみが出やすい方向に振れることがある

2. 元肥と追肥で話は変わるのか?(変わりますよ)

変わります。しかもここが事故の分かれ目になります。

2-1. 元肥:初期の葉面積を“適正”に作る

元肥の窒素の役割は、

  • 初期生育の立ち上がり
  • 葉面積の確保
  • 着塊の安定

です。ここが不足すると、後半で取り返しにくいです。

2-2. 追肥:効けば伸びるが、効きすぎると“枯れない”

追肥(分施)は、条件によっては
生育期間の延長→収量(特にでん粉収量)増
につながることがあります。

ただし注意点があり、追肥や緩効性肥料の使い方によっては

  • 枯凋期が遅れる
  • 後半まで窒素が残り、でん粉価(比重)が下がる

この「枯れない」は加工用・生食用ではかなり危険です。

■ 重要:窒素の“カットオフ”という考え方

加工用・生食用ほど、
後半に窒素が残らない設計が安全です。
追肥は「やる/やらない」ではなく、
いつまでに効きを切るかで判断するとミスが減ります。

3. 品種・用途で「窒素の許容量」は違います

同じ馬鈴薯でも、用途が違えば“事故”の定義も変わります。

■ 用途別の考え方(目安)

用途 重視される点 窒素過剰で起きやすい事故 目標吸収Nの目安
生食用(男爵・メークイン等) 外観・食味 変形いも、食味低下 約11kg/10a前後
加工用(トヨシロ等) 比重・品質基準 比重低下=取引リスク 11〜12kg/10a
でん粉原料用(コナヒメ等) 総でん粉収量 多少の低下は許容される場合あり 条件次第でやや多めも

※上記は「考え方の軸」を作るための目安です。土壌条件と地域の指標に合わせて調整してください。

4. “見えない窒素”を計算に入れると事故が減ります

窒素事故の多くは、施肥量の問題というより
地力窒素・残渣・堆肥を見落とした結果です。

■ 施肥設計の基本式(考え方)

施肥N(kg/10a)= 目標吸収N − 地力由来N − 残渣由来N − 堆肥有効N + 損失補正

ここを「勘」でやると、年によってブレます。
土壌診断(熱水抽出性窒素など)を活用できると、精度が上がります。

5. 圃場で使える「窒素過剰チェックリスト」

最後に、現場で判断しやすい形に落とします。

■ 過剰を疑うサイン

  • 葉色が濃く、茎葉が立ちすぎる
  • 畝間が早く閉じ、風通しが悪い
  • いつまでも青い(枯凋が遅れる)
  • 疫病などの病害が出やすい
  • 収穫前なのに“締まり”が弱い気がする(用途により注意)

これが当てはまる場合、次作からは
「元肥で立ち上げ、後半に残さない(追肥とかをしない)」方向へ見直すのが安全です。


まとめ:結局どうすればいいか

  1. チッソは悪ではなく、効かせどころを外すと事故る
  2. 判断軸は施肥量ではなく、吸収量と後半の残効
  3. 土壌診断+用途別設計にすると、収量と品質を両立しやすい

イモの品種、用途、土壌成分によって判断は変わります!
適切な判断をしていきましょう!

本記事の参考文献

本記事は、以下の公的な研究報告および専門資料のデータを基に構成しています。

  • 『ジャガイモの土壌管理と施肥管理(種類別の施肥技術)』
    • 執筆:笛木 伸彦(地方独立行政法人 北海道立総合研究機構)
    • 出典:『農業技術大系』畑作物の施肥技術 第6-②巻
    • <ポイント> 用途別(デンプン原料・生食・加工用)の窒素吸収量の目安や、窒素とデンプン価の相関関係、土壌診断に基づく減肥設計の基本ルールが詳しくまとめられています。
  • 『高温化がジャガイモの生育と収量に及ぼす影響』
    • 執筆:津田 昌吾(農研機構 北海道農業研究センター)
    • 出典:『いも類振興情報』162号(2025年1月)
    • <ポイント> 近年の猛暑がデンプン価に与える影響や、窒素をやや多めに管理することで「夏疫病」による早期枯凋を緩和し、結果として収量を伸ばす可能性について言及されています。
  • 『ジャガイモ 普通栽培 ―栽培の基本技術―』
    • 執筆:浅間 和夫 / 改訂:藤田 涼平(北海道立総合研究機構)
    • 出典:『農業技術大系』第5巻
    • <ポイント> 植え付けから収穫までの生育プロセスや、窒素・カリの過剰施用が品質(デンプン価)を低下させるメカニズムなど、ジャガイモ栽培の「基本」が網羅されています。
  • 『加工原料用ばれいしょ新品種「トヨシロ」について』
    • 執筆:坂口 進 ほか
    • 出典:『北海道農業試験場研究報告』116号(1976年)
    • <ポイント> 国内のポテトチップス用ジャガイモの基準を作った「トヨシロ」の特性と、その施肥量に対する反応(収量・比重)の基礎データが記されています。
  • 『ぽろしり(チップス用)―ジャガイモシストセンチュウとそうか病に抵抗性を持つ新品種―』
    • 執筆:津山 睦生(カルビーポテト株式会社)
    • 出典:『いも類振興情報』130号(2017年1月)
    • <ポイント> 最新の加工用品種「ぽろしり」において、デンプン価(比重)を維持するための適切な施肥設計と完熟塊茎生産の重要性が強調されています。
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