土壌診断で「カリ十分」…それ、信じていいんですか?(馬鈴薯の落とし穴)
「イモはカリが大事」と言われる一方で、土壌診断を見ると交換性カリが“十分”。
このとき迷うのが、
- 土にあるカリって、そのまま効くのか
- 追加で入れるべきか、引くべきか
- 入れるなら、どんなカリをいつ入れるのか
こんにちはチーパパです。
結論から言うと、土壌診断のカリは“わりと信用していい”です。
ただし、「土にある=すぐ効く」ではありません。ここを勘違いすると、ムダ金か品質事故のどちらかに寄ります。
1. 土壌分析で測っている「カリ」は何者なのか

一般的な土壌診断の「カリ」は、主に交換性カリです。
これは、土の粘土や腐植の表面に吸着していて、土壌溶液中のカリが減ると補充役として供給されやすい形です。
つまり土壌診断は、ざっくり言えばその畑のカリ貯金(引き出しやすい分)を見ています。ただし注意点もあります。交換性カリは「吸える可能性が高い」だけで、条件が悪いと吸収が伸びません(乾燥・根域制限・塩類濃度が高い等)。
2. 「交換性カリ」と「施肥カリ」は同じではありません
- 交換性カリ:土が持っている“引き出しやすいカリ”
- 施肥カリ:外から入れる“追加チャージ”
ここでありがちな事故が、
「土にある(診断で十分)けど念のため追加」→ イモが“あるだけ吸う”→ 品質が落ちる
という流れです。
馬鈴薯はカリ施肥で収量が上がる場面もありますが、多すぎるカリや、K源の違い(特に塩化物)で比重(特定重)やでんぷん・品質が下がることが報告されています。 (acsess.onlinelibrary.wiley.com)

3. 土壌診断で「十分」と出た圃場はどう扱うべきか(まずは基準を知る)
北海道の畑作物向け基準の例では、交換性カリ(K2O)の目安は以下のように整理されています。
- 0〜15 mg/100g:低い
- 15〜30 mg/100g:基準(標準)
- 30 mg/100g〜:高い (農林水産省)
ここで大事なのは、「30を超えているのに、標準どおり入れる理由は薄くなる」ということです。
また、有機物やほ場副産物(茎葉など)をすき込む場合は、含まれるカリが土の交換性カリを押し上げるため、カリを減らす前提で考える整理もされています。

4. 「十分」でも、それでも施す理由があるケース(ちゃんとあります)
土壌診断が標準〜高めでも、以下の条件だと“数字のわりに効きが出にくい”ことがあります。
4-1. 砂質でCECが低い(保持できない)
CECが低い土は、カリを抱え込む力が弱く、降雨や灌水で動きやすいです。
この場合は「量を増やす」より、分施・条施(根の近くに薄く効かせる)のほうが合理的になりやすいです。
4-2. 苦土(Mg)とのバランスが悪い
土壌診断では、カリ単体だけでなく、塩基バランス(例:Mg/K)も見ます。
北海道の畑作物の基準例でも 苦土・カリ比(Mg/K)への言及があり、バランスを崩すと吸収の見え方が変わります。
4-3. 乾燥・根域制限・塩類が高い
根が動けない、土壌溶液が濃すぎる、乾きすぎるなどで、「土にあるのに吸えない」が起こり得ます。 (農林水産省)
この場合は、カリ追加より先に水分・根域・塩類(EC)の整備が効くことも多いです。
5. 「十分」なら施さない判断もアリ
交換性カリが30 mg/100g を超えるような圃場では、まずは減肥の検討が自然です。
そして馬鈴薯は、カリが多いと比重が下がる(=でんぷん・加工適性が落ちる方向)ことがあり、
特に塩化カリ(KCl)は、硫酸カリ等に比べて比重を下げやすいという報告があります。 (acsess.onlinelibrary.wiley.com)

6. まとめ:「土にある=すぐ効く」ではない。でも「土にある=無視」でもない
- 土壌診断のカリは、主に交換性カリ(引き出しやすい貯金みたいな)を見ています。
- 基準の目安(例)として 15〜30 mg/100g が標準、30超で高い。
- 馬鈴薯は、カリが効く作物ですが、多すぎると品質(比重など)を落とす方向に振れ得ます。
- 「十分」な圃場は、まず減肥の検討。それでも入れるなら、量より根の近くに・タイミングと形で考えるのが安全です。
ムダに入れて品質を落とすのが、いちばんの虚無なので(肥料代も、でんぷん価も消える)。数字で淡々と引き算が強いです。
みなさんで美味しいイモを作りましょう!!
参考文献・参照
- 農林水産省:畑作物(土壌診断・施肥対応関連資料) (農林水産省)
- 北海道(畑作物の土壌診断基準:交換性カリ 15〜30 mg/100g 等)
- Wilmer et al., 2022:馬鈴薯は塩素影響を受け得るため硫酸カリ推奨の背景 (Frontiers)
- Sidhu et al., 2025:K源・施用量と比重/品質の関係(KClで比重低下など) (acsess.onlinelibrary.wiley.com)
- Dunn, 1945:塩化物系カリ肥料で比重低下の報告 (スプリンガーリンク)
- ヤンマー:土壌中のカリ形態(交換性・固定・一次鉱物)解説 (YANMAR)


