シロイチモジヨトウ初動で“効かせきる人”が選んでいる薬剤の考え方
初動で「効いた気がする」のに食害が止まらない原因は、薬剤の選び方にあります。
こんにちはチーパパです。
今回は、接触/食毒、幼虫サイズ、IRACで初回の判断を整理します。
はじめに:「効いた気がした」が一番危ない理由
てんさい圃場のシロイチモジヨトウ防除で、初動を外すとだいたい同じ流れになります。
- 初回散布後、「落ち着いた気がする」
- 数日後、食害がじわっと再拡大
- 追いかけ散布が続いて、手間もコストも増える
この“効いた気がする”は、薬剤が弱いというより、選び方の軸(接触・食毒、幼虫サイズ、次の一手)が整理できていないことで起きがちです。
この記事では、特定の商品名の押し売りはしません。
代わりに、初動で“効かせきる人”がやっている判断ロジックをまとめまさせて頂きます。
結論:初動でブレない人は「薬の強さ」より“当て方とサイズ”を見ている
初動で効かせきる人は、だいたいこの順で考えています。
-
幼虫サイズ(小・中・大)を見て、勝ち筋を決める
-
接触寄りか、食毒寄りかの役割を分ける
-
IRACで次の一手まで決めて、同じ系統を連打しない
初動で「効いた気がする」が起きる3パターン

1)食害が止まったように見える(でも中で進行している)
散布直後に目立つ食害が減ったように見えても、葉裏・株元・葉の重なりに幼虫が残っていると、数日後に再び食害が出ます。
“見えるところ”だけが落ち着いたケースです。
2)散布ムラで「効いた場所」と「残った場所」ができる
初回は特に、風・水量・走行速度・展着の有無などで当たり方が変わります。
一部が効くと全体が効いたように錯覚しやすいのが厄介です。
3)幼虫サイズが想定より進んでいる
小齢幼虫向けのつもりで組んだ初回が、実際は中齢以上が混じっている。
このズレがあると、初回の“止まり”が弱くなり、追いかけ散布の入口に入りやすくなります。
接触だけ vs 食毒重視:まず「初回の役割」を決める

薬剤選びは「接触が正解」「食毒が正解」ではなく、圃場の状態に合わせて役割を決めるのが先です。
接触寄りが得意な場面(当たれば速い)
- 幼虫が葉の表面に出ている
- 幼虫が小さく、動きが活発
- 散布条件が良い(風が弱い、水量確保、ムラが少ない)
- “初回で一気に落としたい”局面
接触寄りはハマると速い反面、当たらないと残るので、散布精度が勝負になります。
食毒寄りが強い場面(食わせて止める比重が上がる)
- 食害が拡大傾向
- 幼虫が隠れがち(葉裏・株元・葉の重なり)
- 幼虫サイズが中齢以上が混じる
- “とにかく摂食を止めたい”局面
食毒寄りは、接触ほどの即効感が出ない場合もありますが、条件が悪いときの安定感が出やすい考え方です。
初回は「減らす」か「止める」かを決める
- 幼虫が小さく点在 → 減らす(潰す)狙いを強める
- すでに食害が広がっている → 止める狙いを強める
初回の狙いが決まると、薬剤の選択肢が自然に絞れます。
幼虫サイズ別:初動の向き不向き早見表

※サイズはあくまで目安です。年・圃場条件で前後します。
| 幼虫の目安 | 圃場の見え方 | 初動で意識すること | 薬剤選びの軸 |
|---|---|---|---|
| 極小〜小(例:数mm) | 食害が点在、まだ軽い | 初回で取りこぼしを減らす | 接触も食毒も成立しやすい。散布精度(水量・展着・ムラ)が勝負 |
| 中(例:5〜10mm) | 食害が面で広がり始める | “止める”比重が上がる | 食毒寄り・浸達性の考え方・残効の設計が重要 |
| 大(それ以上) | 穴が目立つ、株元に潜る | 追いかけ散布になりやすい | 物理的に当てにくい。次手前提(再散布計画)で組む |
ここで大事なのは、「サイズが進むほど、初回1発で決めるのが難しくなる」という現実です。
初回を“勝てる条件”に近づけるために、判断軸が必要になります。
IRACは「正解探し」じゃなく、同じ失敗を繰り返さない仕組み

IRACの役割:系統連打で効きが落ちるのを避ける
効きが悪い年ほど、人は焦ります。
そして一度「効いた気がした」系統を、無意識に連打しがちになります。
ただしこれは、その年はまだしも、中長期では確実に苦しくなる選択です。
IRACは
「一番強い薬を探すための分類」ではありません。
〈同じ作用機構を続けて使わないための“地図”〉です。
迷ったときに戻るための、考え方の軸だと思ってください。
よく使われがちな系統を「名前」より“役割”で見る(超ざっくり)
ここでは商品名ではなく、考え方の整理だけを行います。
作目登録や地域差があるため、使用前には必ず最新情報を確認してください。
グループ28(ジアミド系)
- 食害を「止める」力が分かりやすい
- 初動でも、追いかけ局面でも軸にしやすい
- その分、連続使用になりやすいのでローテの意識が重要
👉「困ったら28」になりがち。だからこそ、次の手を必ず用意する。
グループ30(メタジアミド系)
- 摂食抑制を軸にしつつ、28とは異なる作用機構
- 「28を使いたいが、続けたくない」場面でのローテ要員
- 初動〜中盤の入れ替え札として価値が出やすい
👉 28の代替ではなく、28を長持ちさせるための系統として考えると整理しやすい。
グループ5(スピノシン系)
- 比較的速効性を感じやすい
- 食毒寄りで、当たりにくい場面でも仕事をしやすい
- 初動で「効いた感」が出やすいが、連打は避けたい
👉 初回やローテの要所で使いやすい、バランス型の一手。
グループ18 / 15(IGR系)
- 幼虫の発育段階によって効き方が大きく変わる
- 「いつでも効く」系統ではない
- 使うならどのステージを狙うかをはっきりさせる必要あり
👉 初動で雑に置くと外しやすい。ハマると効くが、前提条件が多い。
グループ3A(ピレスロイド系)
- 接触が決まれば速い
- 風・水量・ムラの影響を強く受ける
- 圃場条件次第で「効いた年」と「全然な年」の差が出やすい
👉 使うなら役割を限定。万能扱いはしない方が安全。
グループ1B(有機リン系)
- 接触・食毒の両面を期待できる場面はある
- ただしローテ上は重くなりやすい
- 連用前提ではなく、位置を決めて使う系統
👉 「効いたから続ける」ではなく、「ここで使う」と決めて置く。
ローテーションは「初回 → 2回目」まで決めて初めて機能する
初回で迷うと、
2回目はほぼ確実に行き当たりばったりになります。
逆に言えば、
- 初回の時点で
「次は違うIRACのこの剤を行く」
と決めておくだけで、
初回の薬剤選択は一気にシャープになります。
IRACは縛りではなく、
初動判断を楽にするための道具です。
初動で迷ったときの「選び方テンプレ」

現場で迷ったら、以下を上から埋めてください。
これだけで“効いた気がした事故”が減ります。
① 幼虫サイズ
- 小(点在) / 中(拡大) / 大(潜る・穴だらけ)
② 潜り具合(見えるか、隠れるか)
- 葉表に出る / 葉裏に多い / 株元に潜る / 葉の重なりで当たりにくい
③ 食害の広がり方
- 点在 / 面で拡大 / 急拡大(進行が速い)
④ 散布条件(“当てられる日”か)
- 風、水量、走行速度、展着、作業精度
→ 当てにくい日は、接触一本で勝負しない設計が安全寄り
⑤ 次回散布までの間隔(天候含む)
- 何日空くか
→ 空くなら「止める」比重と次手の確保が重要
⑥ ここまでを踏まえて決める(結論)
- 初回は 接触寄りで「潰す」か
- 初回は 食毒寄りで「止める」か
- 2回目は IRACを変える前提で組む
まとめ
- 初動で外す原因は、薬の強さより 当て方(接触/食毒)と幼虫サイズのズレが多い
- 幼虫サイズ→接触/食毒→IRACで次手の順に整理するとブレにくい
- 初回から「2回目はIRACを変えたこの剤にしよう」まで決めると、追いかけ散布に入りにくい
気になる方多いので、一緒に意見交換いたしましょう!
注意事項(必ず確認してください)
農薬の使用は、作目登録・使用回数・希釈倍数・収穫前日数などラベルの遵守が前提です。
登録や使用条件は変更されることがあるため、最新情報を確認のうえ、地域の指導機関(普及センター・JA等)の助言も踏まえて判断してください。


