暑さや乾燥が続くと、馬鈴薯の畑を見ながら、
「葉と茎熱波でやられたわぁ」
「なんかやれることないのか?」
と心配になることはありませんか?
こんにちは、チーパパです。
そんなとき、生育を支える方法の一つとして気になるのが「ケイ酸」です。
今回はケイ酸シリーズとして、じゃがいも(イモ)にもケイ酸は役立つのかを調べてみました。
海外には、ケイ素を含む資材を施すことで、
葉面積やイモの重さが増えた研究があります。
さらに、馬鈴薯ではそうか病との関係も気になるますよね。
特に土壌pHを上げる資材だったら尚更。。
この記事では、ケイ酸に期待できる働きと、研究から分かっていることを整理します。
そのうえで、ケイ酸を試す前に土壌pHを確認する理由と、自分で測定・記録する方法も紹介します。
1.馬鈴薯はケイ素を大量に蓄える作物ではない
イモは一般に、ケイ素を多く蓄積しない作物として扱われています。
ドイツの圃場研究では、葉と根のケイ素含有量は低く、イモの皮と内部ではごくわずかでした。
また、別の長期試験の解析では、土壌中の植物が利用できるケイ素量と収量に相関が認められませんでした。出典:2024年のドイツの圃場研究
ただし、含有量は品種や部位、栽培条件、測定方法によって変わります。
「ケイ素をあまり蓄えないから効果がない」とも、
「土にケイ酸を増やせばイモが増える」とも、単純には言えないということです。
では、実際に施用した試験では、どのような結果が出ているのでしょうか。
2.乾燥した年に、株当たりのイモの重さが増えた試験
ポーランドのWadas・Dębskiによる研究では、極早生品種「Catania」を使い、
2016〜2018年にケイ素を含む資材「Optysil」の葉面散布を評価しています。
株当たりのイモの合計重量は、次のように年によって異なりました。
| 試験年 | 無施用区 | 施用区 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 2016年・生育中に乾燥期間あり | 361.3g/株 | 444.6g/株 | 約23%増加、有意差あり |
| 2017年 | 407.3g/株 | 424.4g/株 | 有意差なし |
| 2018年・非常に乾燥した年 | 170.7g/株 | 193.0g/株 | 約13%増加、有意差あり |
有意差とは、簡単に言えば、統計的に偶然のばらつきだけでは説明しにくい差のことです。
この試験では、乾燥した年に施用区のイモが重くなりました。
一方で、有意な差が認められない年もありました。出典:Wadas・Dębski、2022
なお、資材には鉄も含まれるため、これはケイ素単独の効果とは言い切れません。
また、植え付けから75日で収穫する早掘り栽培の結果です。
「23%増えた」という数字は気になりますが、
同じ増加率を北海道の品種や栽培にそのまま当てはめる事はできません。
3.ケイ酸は、イモを太らせる葉の働きを助けるのか
イモの葉は、日光を受けて光合成を行い、
イモを太らせるもとになる糖をつくっています。
そのため、イモの肥大を考えるときは、
葉がどれだけ広がり、その葉がしっかり働いているかが大切です。
研究で出てくる「LAI(葉面積指数)」は、畑の面積に対して葉の面積がどれくらいあるかを表した数字です。ただし、葉が多いことと、収量が増えることは同じではありません。

水が十分ある条件でも、葉や光合成に変化
ブラジルのPilonらが2013年に報告した試験では、
水を十分に与えた馬鈴薯に、可溶性ケイ素を土から与える方法と、
葉に散布する方法を試しました。
その結果、葉面積や光合成速度などの増加が報告されています。
一方で、葉から水分が出ていく「蒸散」も増えていました。
(蒸散が増えるという事は、根から水を吸うちからは強くなる?)
出典:Pilonら、2013
水不足の条件では、生育を支える可能性
ブラジルのPilonらが2014年に報告した温室ポット試験では、
水不足にした馬鈴薯に、ケイ素を土から与える方法と、葉に散布する方法を試しています。
試験では、次の4つの区を比較しました。
- 水を十分に与え、ケイ素を施用しない区
- 水不足にして、ケイ素を施用しない区
- 水不足にして、ケイ素を土壌施用する区
- 水不足にして、ケイ素を葉面散布する区
ケイ素を与えた区では、乾燥に伴う細胞の傷みを抑える酵素の働きや、イモの乾物重(水分を除いた重さ)に改善が見られました。
また、葉の水分状態やイモの収量は、水を十分に与えた区に近い値を示しました。
出典:Pilonら、2014
水不足のときに葉の状態を保ち、イモの生育を支える可能性があるという、
興味深い結果です。
ただし、温室のポットと実際の畑では条件が違います。
また、水不足への効果を調べた試験から、高温障害も防げるとまでは言えません。
4.土壌施用と葉面散布では、見るべき点が違う
同じ「ケイ酸資材」でも、土に入れるものと葉に散布するものでは、
使い方も土壌への影響も異なります。
土壌施用では、植物へのケイ素供給に加えて、資材が土の性質を変える可能性があります。ドイツの研究では、過去に報告された効果を説明する候補として、保水性やリンの利用しやすさの変化が挙げられています。出典:2024年のドイツの圃場研究
ただし、これは作用の仕組みについての考察です。「北海道の黒ボク土でも、ケイ酸を入れればリン酸が使いやすくなる」と一律に判断することはできません。
葉面散布についても、製品によって成分や濃度が異なります。ある研究で使った量や散布時期を、そのまま別の商品に当てはめないようにしましょう。
資材を選ぶときは、ケイ酸の含有量だけでなく、施用方法や一緒に含まれる成分まで確認することが大切です。

5.そうか病が出やすい畑では、土壌pHも確認しよう
馬鈴薯でケイ酸の土壌施用を考えるときは、生育への効果だけでなく、そうか病への影響にも目を向けたいところです。
特に、生食用のイモを栽培している畑や、過去にそうか病が多かった圃場では、
資材を加える前の確認が重要になります。
pHとアルミニウムは、どちらも関係している
北海道の黒ボク土などを対象にした研究では、土壌中のアルミニウムイオンの働きと、
そうか病の抑制との関係が示されています。出典:吉田ら、1997
また、可溶性ケイ酸がアルミニウムの溶出に関わり、そうか病の発生にも影響することが報告されています。出典:吉田ら、1994
つまり、ケイ酸の施用では、作物への作用だけでなく、
土の中の条件がどう変わるかも考える必要があります。
ただし、これらの研究から、すべてのケイ酸資材がそうか病を増やすと結論付けることはできません。
ケイカルなどは、酸性を矯正する働きもある
ケイ酸カルシウムやスラグなど、酸性矯正の働きを持つ資材では、ケイ酸の補給とともに土壌pHが変わります。
「ケイ酸がよさそうだから」と施用する前に、次の点を確認しておきましょう。
- 現在の土壌pHと、これまでの土壌診断結果
- 資材のアルカリ分と施用予定量
- 過去のそうか病の発生状況
道総研でも、土壌pHの調整をそうか病の総合対策の一つに位置付けています。
参考:道総研「総合対策」
一方で、pHを下げれば下げるほどよいわけでもありません。同じpHでも土壌によって病気の抑えられ方は異なり、交換性アルミニウムが多すぎる条件では、馬鈴薯の生育への悪影響も指摘されています。出典:水野・吉田、1994
まずは自分の畑の数値を知り、発病履歴や土壌診断と合わせて判断する。
ここが、資材選びの出発点になります。
葉面散布も、そうか病対策の代わりではない
土壌施用とは別の方法として、葉面散布を検討することもできます。
ただし、葉面散布で生育が改善したという結果は、そうか病を防げることの証明ではありません。土壌への影響が全くないとも言い切れないため、使った区と使わない区で、収量と発病状況を合わせて記録したいですね。
6.資材を足す前に、土壌pHを測って記録する
ここまで研究を見てくると、ケイ酸を試してみたくなる方もいると思います。
その前に、一度確認しておきたいのが、今の畑のpHはどのくらいかです。
手元に土壌診断結果があれば、まずはそこから確認しましょう。
さらに、圃場ごとの違いや施用前後の変化を自分でも追いたい場合は、
pHメーターが選択肢になります。
pHを測っても、土のケイ酸量やアルミニウム量が分かるわけではありません。
それでも、酸性矯正を伴う資材を検討するうえで、土の状態を知るための基本的な情報になります。

気になる畑は、pHを一度確認しておくと安心です
ケイ酸を試すかどうかにかかわらず、自分の畑のpHは知っておきたいですね。
収穫してから「今年はそうか病が多かったな……」となると、
せっかく育てたイモだけに残念です。pHだけで防げる病気ではありませんが、
資材を入れる前の数値が分かっていれば、施用を考える材料になります。
まずは、手元の土壌診断結果を見返してみてください。
それで確認できれば、すぐに測定器を買う必要はありません。
一方で、「気になる畑を自分でも測りたい」「資材を入れる前後で比べたい」という方には、HORIBAのコンパクトpHメータ「LAQUAtwin」のような道具があると便利です。少量の液体をセンサに滴下して測る、小型のpH計です。製品仕様:HORIBA公式
土壌の場合は、採った土に水などを加え、決められた方法で測定用の液を準備します。
土に挿すだけではありませんが、同じ方法で測って記録しておけば、畑ごとの違いや変化を追う手がかりになります。
資材を足す前に、今の土を知っておく。
(健康診断行かないのに何をすればいいのかは分からないですよね。)
ケイ酸を使う・使わないに関係なく、役立つ確認だと思います。
自分でも測ってみたい方は、こちらに商品情報を載せておきます。
型番や付属品、価格を比べる参考にしてみてください。
※測定には校正やセンサの洗浄が必要です。土の採り方や測定方法をそろえ、土壌診断結果と比較するときは測定条件も確認してください。そうか病への対応や施用量は、pHだけでなく発病履歴なども合わせて判断しましょう。
まとめ ケイ酸の可能性を知り、まずは畑の状態を確かめよう
イモへのケイ酸施用には、葉の働きや、乾燥時のイモの生育を支える可能性があります。一方で、効果がはっきりしない年もあり、資材や栽培条件によって反応は異なります。
今回、押さえておきたいのは次の3点です。
- ケイ酸の効果は、葉の見た目だけでなく収穫結果で確かめる。
- 土壌施用では、土壌pHやそうか病の発生履歴も確認する。
- 資材を試す前の状態を記録し、使わない区と比較する。
新しい資材を試すときほど、施用前の記録が役立ちます。
まずは土壌診断の結果を見直し、自分でも継続して測りたい場合は、
pHメーターの活用を検討してみてください。
「何を足すか」を考える前に、「今の畑はどうなっているか」を確かめる。
そのうえで、小面積から試し、売れるイモが増えたか、そうか病はどうだったか、
費用に見合ったかまで見ていく。
ケイ酸の可能性を、自分の畑での判断につなげていきたいですね。
ケイ酸シリーズの関連記事もこちらにまとめています。ケイ酸そのものについて知りたい方や、玉ねぎでも使えるのか気になる方は、あわせて読んでみてください。
