ねぎの葉に、シロイチモジヨトウの食害が見える。
葉の隙間ではアザミウマが増え、さらにハモグリバエやネギコガの食害痕も気になる。
害虫が1種類だけなら、対象を絞って薬剤を選びやすいでしょう。
しかし、実際の圃場では複数の害虫が同じ時期に発生することがあります。
こんにちはチーパパです。
そんな場面で候補になるのが、グレーシア乳剤です。
グレーシア乳剤は、フルキサメタミドを有効成分とするIRAC30の殺虫剤です。
チョウ目害虫だけでなく、アザミウマ類、ハモグリバエ類、クロバネキノコバエ類、ネダニ類など、異なるグループの害虫に登録があります。
そして、グレーシア乳剤の大きな特徴が、害虫の神経のブレーキ役を阻害する作用です。
害虫は神経の興奮を抑えられなくなり、過興奮やけいれんを起こし、正常に動いたり食害したりできなくなります。
今回は、グレーシア乳剤の作用機構、得意な害虫、速効性、残効性、葉内への浸達性、ねぎ防除での使いどころ、IRACローテーションの考え方を整理します。
農薬使用前の注意
この記事は、グレーシア乳剤の特徴と使いどころを理解するための資料です。実際に使用する際は、必ず製品ラベルと最新の農薬登録情報を確認してください。
作物名、対象害虫、希釈倍数、使用液量、使用時期、収穫前日数、使用回数、使用方法を守り、地域の防除基準や指導機関の情報も参考にしてください。
今回の防除スキル|グレーシア乳剤
| 項目 | スキル情報 |
|---|---|
| スキル名 | グレーシア乳剤 |
| スキルコア | フルキサメタミド |
| 農薬の種類 | フルキサメタミド乳剤 |
| 用途 | 殺虫剤 |
| IRAC表示 | 30|イソオキサゾリン系|神経遮断属性 |
| スキルタイプ | 速効・広域対応・葉裏追跡型 |
| 主な得意害虫 | チョウ目害虫、アザミウマ類、ハモグリバエ類など |
| 初動火力 | 速効性が紹介されている |
| 持久力 | 製品資料では約2週間の持続性を紹介 |
| 潜入力 | 葉内への浸達性がある |
| 主な注意点 | IRAC30の連用回避、使用方法の確認、散布ムラの防止 |
フルキサメタミドはイソオキサゾリン系に分類され、IRACコードは30です。
速効性だけを売りにした薬剤ではなく、対象害虫の幅、葉内への浸達性、一定の持続性を組み合わせて使えるのが特徴です。
グレーシア乳剤の最大の特徴 神経のブレーキを壊す
グレーシア乳剤を理解するうえで、最も押さえておきたいのが作用機構です。
フルキサメタミドは、昆虫の神経系に作用します。
ただし、神経を単純に停止させる薬剤ではありません。
害虫の神経には、興奮を強める仕組みと、興奮しすぎないように抑える仕組みがあります。
このうち、神経の興奮を抑える役割を持つのがGABAと呼ばれる神経伝達物質です。
GABAは、害虫の神経にある塩化物イオンチャネルを働かせ、神経が過剰に興奮しないように調整しています。
人間の操作に例えるなら、GABAは神経のブレーキ役です。
フルキサメタミドは、このGABA作動性塩化物イオンチャネルに作用し、正常な働きを阻害します。
その結果、害虫は神経の興奮を抑えられなくなります。
- 神経のブレーキ機能が乱れる
- 神経が過剰に興奮する
- 体がけいれんする
- 正常に歩けなくなる
- 作物を食べ続けられなくなる
- 最終的に死に至る
つまり、グレーシア乳剤は害虫を静かに眠らせる薬剤ではありません。
神経のブレーキを効かなくし、過興奮とけいれんによって正常な行動を封じる殺虫剤です。
防除スキル図鑑では神経遮断属性としていますが、実際の作用に近い言い方をするなら、神経制動解除型とも表現できます。

スキル発動イメージ
害虫がグレーシア乳剤の有効成分を取り込むと、神経の興奮を抑える仕組みが乱れます。
神経から発せられる信号をうまく制御できなくなり、全身の動きが不安定になります。
その後、過興奮やけいれんが起こり、摂食や移動が難しくなります。
作物を食べ続ける力を失い、やがて死に至るという流れです。
ただし、散布直後にすべての害虫が一斉に落下するわけではありません。
効果の現れ方は、害虫の種類、成長段階、薬剤への接触量、気温、散布状況などによって変わります。
食毒だけではない 害虫の皮膚からも取り込まれる
グレーシア乳剤の速効性を考えるうえでは、有効成分が害虫に入る経路も重要です。
フルキサメタミドは、害虫が薬剤の付着した作物を食べることによる食毒作用だけでなく、薬剤が害虫の体表から取り込まれる接触作用も期待できます。
つまり、害虫が薬剤の付いた葉を大量に食べるまで、ただ待つ薬剤ではありません。
薬液が害虫の体に付着すれば、体表からも有効成分が取り込まれます。
この食毒作用と接触作用の両方が、効きの立ち上がりの速さにつながっています。
特にシロイチモジヨトウなど、短時間でも食害を進める害虫では、摂食を早く止めることが重要です。
ただし、接触作用があるからといって、薬液がほとんど付着していない害虫まで十分に防除できるわけではありません。
薬剤の性能を生かすには、対象部位へ薬液を届ける散布精度が必要です。
グレーシア乳剤のスキル評価

製品資料や登録内容をもとに、グレーシア乳剤の特徴を5段階で整理します。
この評価は、防除スキル図鑑内で薬剤の特徴を比較するためのイメージです。
すべての作物、害虫、圃場条件で同じ評価になるわけではありません。
| 評価項目 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 初動火力 | ★★★★★ | 食毒作用と接触作用があり、製品資料で速効性が紹介されている |
| 持久力 | ★★★★☆ | 約2週間の持続性が紹介されているが、圃場条件で変動する |
| 対応範囲 | ★★★★★ | チョウ目、アザミウマ目、ハエ目、ダニ目などに登録がある |
| 潜入力 | ★★★★☆ | 葉内への浸達性があり、葉裏側の害虫にも効果が期待できる |
| ローテーション価値 | ★★★★★ | IRAC30として既存剤と異なる作用機構を組み込みやすい |
| 扱いやすさ | ★★★☆☆ | 散布、灌注、苗浸漬など使用方法が異なるため確認が必要 |
初動火力は高め
グレーシア乳剤は、効きの速さが特徴として紹介されています。
害虫の口からだけでなく、体表からも有効成分が取り込まれるため、摂食を早い段階で止めることが期待できます。
特に、食害速度の速いチョウ目害虫や、被害を広げるアザミウマ類を早く減らしたい場面で使いやすい特徴です。
持久力は約2週間が目安
メーカー資料では、散布後約2週間の持続性が紹介されています。
ただし、約2週間という数字は、どの圃場でも確実に同じ期間効くという保証ではありません。
降雨、害虫の発生密度、散布ムラ、作物の生育速度、気温などによって、実際の残効は変わります。
対応範囲が広い
グレーシア乳剤は、チョウ目害虫だけを対象にした薬剤ではありません。
アザミウマ類、ハモグリバエ類、クロバネキノコバエ類、ネダニ類など、異なるグループの害虫も意識できます。
複数害虫が同じ時期に発生している場合、薬剤選びを整理しやすい点が強みです。
IRAC30としてローテーション価値が高い
IRAC30は、GABA作動性塩化物イオンチャネルを阻害するグループです。
既存の主要な殺虫剤とは異なる作用機構を持つため、防除ローテーションの一枠として使いやすい特徴があります。
ただし、IRAC30が新しい系統だから、何度続けて使ってもよいわけではありません。
同じ作用機構を繰り返せば、抵抗性害虫を選抜する圧力になります。
グレーシア乳剤の得意な敵
グレーシア乳剤には、野菜や茶などのさまざまな作物で登録があります。
ここでは、主にねぎで意識したい害虫を整理します。
| 害虫 | グレーシアの狙い | 防除上の注意 |
|---|---|---|
| シロイチモジヨトウ | 若齢幼虫を早く減らす | 葉内へ深く入る前を狙う |
| ネギコガ | 葉内へ潜る幼虫を防除する | 発生初期を逃さない |
| アザミウマ類 | 葉の隙間や葉裏側の個体を防除する | 散布ムラと同系統連用を避ける |
| ハモグリバエ類 | 葉内の幼虫を意識する | 食害痕が広がる前に散布する |
| クロバネキノコバエ類 | 登録された使用方法で幼虫を狙う | 散布と灌注を混同しない |
| ネダニ類 | 株元や苗への処理で防除する | 株元灌注、苗浸漬の登録を確認する |
シロイチモジヨトウ
シロイチモジヨトウは、ねぎ防除で特に警戒したいチョウ目害虫です。
幼虫は葉を食害し、葉身内部へ入り込むことがあります。
幼虫が小さいうちは薬剤に接触しやすいものの、大きくなって葉内へ深く入り込むと防除が難しくなります。
グレーシア乳剤は、シロイチモジヨトウを早い段階で減らしたい場面に向く薬剤です。
ただし、老齢幼虫が多数発生してからの散布では、被害を完全には止められないことがあります。
卵塊、ふ化直後の幼虫、浅い食害痕を確認し、若齢幼虫期を逃さないことが重要です。
ネギコガ
ネギコガの幼虫は、ねぎの葉内へ潜って食害します。
葉に白っぽい筋や透けたような食害痕が現れることがあります。
葉内へ潜った害虫は、葉の表面に薬液を付けるだけでは防除しにくい場合があります。
グレーシア乳剤には葉内への浸達性があるため、ネギコガのような葉内害虫を考えるうえでも特徴を生かしやすい薬剤です。
それでも、被害が大きく広がってからでは遅くなります。
新しい食害痕が出始めた段階で、葉内に幼虫がいないか確認してください。
アザミウマ類
アザミウマ類は、ねぎの葉の隙間や葉鞘部など、薬液が届きにくい場所へ入り込みます。
食害を受けた葉には、白色から銀白色のかすり状の痕が現れます。
密度が上がると、葉全体が白っぽく見えることもあります。
グレーシア乳剤はアザミウマ類に速効的に作用し、葉内への浸達性も紹介されています。
葉の表側に付着した成分が葉内へ入り、反対側にいる害虫にも効果が期待できる点が特徴です。
ただし、薬液が付いていない葉や、散布後に新しく伸びた葉まで自動的に守られるわけではありません。
葉の隙間や株の内側へ薬液を入れる散布を意識してください。
ハモグリバエ類
ハモグリバエ類の幼虫は、葉の内部を食べながら移動します。
葉に白い筋状の食害痕が現れ、その中に幼虫が潜んでいることがあります。
葉の内部にいるため、薬剤が葉の表面に残るだけでは、有効成分が届きにくい害虫です。
グレーシア乳剤の葉内への浸達性は、ハモグリバエ類への効果を考えるうえで重要な特徴です。
ただし、すでに食害された葉が元に戻るわけではありません。
散布後は古い食害痕だけを見るのではなく、新しい筋状の食害痕が増えていないかを確認してください。
クロバネキノコバエ類とネダニ類
クロバネキノコバエ類やネダニ類では、一般的な葉面散布とは異なる使用方法が登録されている場合があります。
特にねぎのネダニ類では、株元灌注や苗浸漬などの登録があります。
ここで注意したいのが、使用方法によって希釈倍数や使用液量が異なることです。
葉面散布の数字を、そのまま株元灌注や苗浸漬へ使うことはできません。
対象害虫名だけを見るのではなく、作物名、害虫名、希釈倍数、使用液量、使用時期、使用方法を一組として確認してください。
グレーシア乳剤の葉裏追跡型とは
防除スキル図鑑では、グレーシア乳剤を葉裏追跡型と表現します。
薬剤が害虫を見つけて追いかける、という意味ではありません。
グレーシア乳剤には葉内への浸達性があり、葉の表側に付着した有効成分が葉内へ入り、反対側へ移動する性質があります。
そのため、葉裏側にいるアザミウマ類や、葉内に潜るハモグリバエ類などにも効果が期待できます。
浸達性と浸透移行性は同じではない
浸達性とは、薬剤が散布された葉の表側から内部へ入り、葉の反対側へ届く性質です。
一方、浸透移行性とは、植物に吸収された成分が、植物体内を通って離れた部位へ移動する性質です。
グレーシア乳剤の葉内への浸達性は、作物全体へ自由に移行することを意味しません。
散布後に展開した新葉や、薬液がほとんど付着していない別の葉まで、十分に守られるとは限りません。
ねぎは葉が次々と伸びるため、散布後の新葉や葉の伸長も見ながら、次の防除時期を判断する必要があります。
約2週間の持久力をどう考えるか
メーカーの製品資料では、グレーシア乳剤は散布後約2週間効果が持続すると紹介されています。
一定の残効性が期待できることで、散布時に発生していた害虫だけでなく、散布後に発生した害虫に対しても効果が期待できます。
ただし、約2週間は絶対的な防除期間ではありません。
実際の持続期間は、次の条件で変わります。
- 散布時の害虫密度
- 害虫の種類と成長段階
- 散布後の降雨
- 気温
- 作物の生育速度
- 新葉の展開量
- 散布液量
- 薬液の付着状況
- 圃場内の散布ムラ
- 害虫の薬剤感受性
例えば、散布後にねぎの葉が伸びれば、新しく伸びた部分には散布時の薬液が付いていません。
また、散布時にすでに害虫が多発していれば、薬剤が効くまでの間にも食害が進む可能性があります。
約2週間効くという説明だけを見て、次の圃場確認を2週間後まで行わないのは危険です。
散布後も害虫の生存、新しい食害痕、新葉への寄生を確認してください。
耐雨性も特徴の一つ
グレーシア乳剤は、耐雨性の高さも製品資料で紹介されています。
散布後に雨が降った場合でも、殺虫効果が低下しにくいとされています。
北海道では、天候を見ながら防除日を決めても、散布後に雨が入ることがあります。
そのため、耐雨性は実際の防除を考えるうえで見逃せない特徴です。
ただし、散布直後に強い雨が降った場合や、薬液が十分に乾いていない場合まで、影響がまったくないとは限りません。
散布時の天候、散布後の降雨までの時間、降雨量なども考慮してください。
ねぎ防除でグレーシア乳剤を使う場面
ねぎでは、シロイチモジヨトウ、ネギコガ、アザミウマ類、ハモグリバエ類が同じ時期に確認されることがあります。
グレーシア乳剤は、このように複数害虫が重なっている場面で候補になります。
特に使いどころとして考えやすいのは、次のような場面です。
- シロイチモジヨトウの若齢幼虫が確認された
- アザミウマ類の密度が上がり始めた
- ネギコガやハモグリバエ類の新しい食害痕が見える
- 複数の害虫を一度に意識したい
- 前回とは異なるIRACコードを使いたい
- 被害を早く抑えて圃場を立て直したい
グレーシア乳剤は、害虫が多発してから最後に使う薬剤というより、発生初期から中期にかけて、複数害虫を早めに減らす場面で特徴を生かしやすい薬剤です。
散布前に確認したいこと
- 発生している害虫は何か
- 若齢幼虫か老齢幼虫か
- 圃場全体で発生しているか、一部だけか
- 新しい食害痕が増えているか
- 前回使用した薬剤のIRACコードは何か
- 対象作物と対象害虫に登録があるか
- 収穫前日数に問題がないか
- 使用回数の上限を超えていないか
- 散布、株元灌注、苗浸漬のどの使用方法か
登録害虫が多いからという理由だけで、とりあえずグレーシア乳剤を使うのはおすすめできません。
害虫を確認せずに使用すると、散布後に何へ効いたのか、何が残ったのかを評価できなくなります。
グレーシア乳剤をローテーションへ組み込む
グレーシア乳剤のIRACコードは30です。
IRACコードは、殺虫剤が害虫のどこへ、どのように作用するかを分類した番号です。
商品名が違っても、IRACコードが同じであれば、抵抗性対策では同じ作用機構として考えます。
同じIRAC30を続けて使用すると、その作用に耐えられる害虫が生き残りやすくなります。
生き残った個体が次の世代を残すことで、グレーシア乳剤が効きにくい害虫集団が増える可能性があります。
| 確認する場面 | 確認内容 |
|---|---|
| 散布前 | 前回と前々回のIRACコード |
| 薬剤選択時 | 商品名ではなく有効成分とIRACを見る |
| 連続防除時 | 異なるIRACコードへ切り替える |
| 複数害虫発生時 | 中心となる害虫への登録を確認する |
| 効果不足時 | 抵抗性だけでなく散布時期や散布ムラも確認する |
ローテーションでは、IRAC30の次に異なるIRACコードの登録薬剤を選びます。
ただし、単純に番号が違えばよいわけではありません。
次に使う薬剤が、対象作物と対象害虫に登録されていることが前提です。
また、収穫前日数、使用回数、前回までの散布履歴も確認する必要があります。
ローテーションの考え方の一例
例えば、チョウ目害虫とアザミウマ類が発生している場面でIRAC30のグレーシア乳剤を使用した場合、次回は発生している害虫を再確認し、異なるIRACコードの登録薬剤を選びます。
害虫の発生がアザミウマ類中心に変わったのであれば、アザミウマ類への登録と効果を重視します。
一方、シロイチモジヨトウが残っているのであれば、チョウ目害虫への登録と幼虫の齢期を重視します。
ローテーションは薬剤名を順番に並べる作業ではなく、圃場に残っている害虫を確認しながら作用機構を切り替える作業です。
トクチオン・アグリメックとの違い
防除スキル図鑑で紹介しているトクチオン乳剤、アグリメック、グレーシア乳剤は、どれも害虫の神経系へ作用します。
しかし、作用する場所と害虫へ起こす変化は異なります。
| 薬剤・成分 | IRAC表示 | 作用の特徴 |
|---|---|---|
| トクチオン乳剤 プロチオホス |
1B|有機リン系|神経崩壊属性 | アセチルコリンエステラーゼを阻害し、神経信号を止められなくする |
| アグリメック アバメクチン |
6|アベルメクチン系|神経麻痺属性 | 塩化物イオンの流入を増やし、神経や筋肉を麻痺させる |
| グレーシア乳剤 フルキサメタミド |
30|イソオキサゾリン系|神経遮断属性 | 神経の抑制機能を阻害し、過興奮やけいれんを起こす |
トクチオン乳剤は、神経伝達物質を分解する酵素を止めることで、神経信号を出し続けさせます。
アグリメックは、神経や筋肉の働きを抑え、害虫を麻痺させます。
グレーシア乳剤は、神経の興奮を抑えるブレーキを阻害し、過興奮やけいれんを起こします。
同じ神経系へ作用する薬剤でも、攻撃する場所は同じではありません。
この違いを理解すると、なぜIRACコードを見てローテーションする必要があるのかが分かりやすくなります。
グレーシア乳剤を使うときの注意点
最新の登録内容を確認する
農薬登録は、適用拡大や登録変更によって更新されることがあります。
この記事は、2026年7月11日時点で確認した農薬登録情報提供システムとメーカー資料をもとに作成しています。
実際に使用する際は、使用当日の最新情報を確認してください。
作物名と害虫名をセットで確認する
グレーシア乳剤に登録されている害虫だからといって、すべての作物で使用できるわけではありません。
同じ害虫でも、作物によって登録の有無、希釈倍数、使用時期、使用回数が異なります。
ねぎ、わけぎ、あさつきなども、登録上の作物区分を確認する必要があります。
散布、株元灌注、苗浸漬を混同しない
グレーシア乳剤には、通常の散布以外の使用方法が登録されている場合があります。
使用方法が違えば、希釈倍数や使用液量も変わります。
別の使用方法に書かれている数字を流用してはいけません。
IRAC30を続けて使わない
グレーシア乳剤を使用した次の防除では、異なるIRACコードを検討してください。
商品名だけを変えても、同じIRAC30であれば作用機構は同じです。
散布ムラを減らす
ねぎの葉は細く立ち上がっており、薬液が均一に付着しにくい形をしています。
アザミウマ類や小さな幼虫は、葉の隙間や株の内側へ入り込みます。
散布前には、次の点を確認してください。
- ノズルが詰まっていないか
- ノズルが摩耗していないか
- 走行速度が速すぎないか
- 散布圧が適切か
- 葉の隙間へ薬液が入っているか
- 畝の両側で付着量に差がないか
- 圃場の端や旋回部に散布ムラがないか
葉内への浸達性は、葉へ付着した成分の働きを助ける性質です。
薬液がほとんど付着していない場所を、後から補ってくれる能力ではありません。
天敵や有用昆虫への影響を確認する
施設栽培で天敵や受粉昆虫を利用している場合は、メーカー資料に記載された影響日数や導入条件を確認してください。
ミツバチやマルハナバチに関する情報が紹介されていても、すべての天敵や有用昆虫に影響がないという意味ではありません。
グレーシア乳剤が向いている場面
| 向いている場面 | 注意が必要な場面 |
|---|---|
| 複数の害虫が同時に発生している | 発生害虫を確認できていない |
| シロイチモジヨトウの若齢幼虫がいる | 老齢幼虫が多発している |
| アザミウマ類を早く減らしたい | 直前にもIRAC30を使っている |
| 葉内害虫を意識したい | 散布方法を確認していない |
| 異なる作用機構をローテーションへ入れたい | 収穫前日数や使用回数に余裕がない |
| 発生初期に被害を抑えたい | 対象作物や害虫に登録がない |
グレーシア乳剤の強みが生きるのは、発生している害虫が分かっており、発生初期に散布できる場面です。
一方、害虫が分からないまま使う、登録を確認しない、IRAC30を連用するという使い方では、特徴を十分に生かせません。
グレーシア乳剤の防除スキルまとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| スキル名 | グレーシア乳剤 |
| スキルコア | フルキサメタミド |
| IRAC表示 | 30|イソオキサゾリン系|神経遮断属性 |
| 作用 | 神経の抑制機能を阻害し、過興奮やけいれんを起こす |
| スキルタイプ | 速効・広域対応・葉裏追跡型 |
| 得意な敵 | チョウ目害虫、アザミウマ類、ハモグリバエ類など |
| 強み | 速効性、幅広い対象害虫、浸達性、持続性 |
| 弱点 | 使用方法が害虫や作物で異なり、IRAC30の連用も避ける必要がある |
| 使いどころ | 複数害虫の発生初期、早く密度を下げたい場面 |
グレーシア乳剤は、フルキサメタミドを有効成分とするIRAC30の殺虫剤です。
害虫の神経を単純に停止させるのではなく、神経の興奮を抑えるブレーキ機能を阻害します。
その結果、害虫は神経の興奮を制御できなくなり、過興奮やけいれんを起こします。
正常な移動や摂食ができなくなり、最終的に死に至るというのが、グレーシア乳剤の作用の特徴です。
さらに、害虫の口だけでなく体表からも有効成分が取り込まれるため、効きの立ち上がりが速いとされています。
葉内への浸達性もあり、アザミウマ類やハモグリバエ類など、葉裏や葉内に潜む害虫にも効果が期待できます。
ねぎでは、シロイチモジヨトウ、ネギコガ、アザミウマ類、ハモグリバエ類など、複数害虫を同時に意識したい場面で使いやすい薬剤です。
ただし、グレーシア乳剤だけで防除体系を組むことはできません。
IRAC30の連用を避け、異なる作用機構の殺虫剤とローテーションする必要があります。
グレーシア乳剤を使う際は、次の5点を確認してください。
- 発生している害虫を確認する
- 若齢期や発生初期を狙う
- 作物と害虫の登録を確認する
- 散布、灌注、苗浸漬を取り違えない
- 次回は異なるIRACコードを検討する
グレーシア乳剤は、薬剤名だけを覚えるより、神経のブレーキを壊して過興奮とけいれんを起こすIRAC30として覚えると、他の殺虫剤との違いが分かりやすくなります。
トクチオン乳剤は神経信号を止められなくする。
アグリメックは神経と筋肉を麻痺させる。
グレーシア乳剤は神経のブレーキを外し、害虫を過興奮させる。
それぞれの攻撃する場所を理解し、圃場にいる害虫と過去の散布履歴を見ながら使い分けることが、防除ローテーションを組み立てる第一歩です。

参考資料
- 農林水産省 農薬登録情報提供システム グレーシア乳剤 第24185号
- 日産化学株式会社 グレーシア乳剤 製品情報
- 日産化学株式会社 グレーシア乳剤 製品資料
- 日産化学株式会社 グレーシア乳剤 ねぎ向け技術資料
- IRAC Mode of Action Classification
- IRAC Group 30 Insecticide Resistance Management Guidelines
本記事の農薬登録情報は、2026年7月11日確認時点の情報をもとにしています。
農薬登録は変更される可能性があります。実際に使用する際は、必ず製品ラベルと最新の農薬登録情報を確認してください。
