直播ビートの除草剤はどう選ぶ?ビートアップ・ハーブラック・レナパックと新体系を整理

てんさい
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ビートの初期生育がゆっくりな一方で、雑草は遠慮なく発生してくるから、
直播ビート、つまり直播てん菜の除草は、移植栽培よりも判断が難しくなりませんか?

こんにちはチーパパです。

直播ビートの除草剤防除では、ビートアップフロアブル、ベタナール乳剤、ハーブラックWDG、レナパック水和剤などを、雑草の種類、雑草の大きさ、ビートの葉齢、土壌水分に合わせて使い分けることが大切です。

さらに近年では、除草剤耐性てんさい品種「KWS 8K879」と専用除草剤「コンビソOD」を組み合わせた新除草体系も登場しています。
従来体系とは考え方が大きく違うため、この記事では最後にその特徴と注意点も整理します。

この記事では、北海道の直播ビートを想定して、主な除草剤の特徴、効きやすい雑草、
散布時期、混用スケジュール、薬害を避けるための注意点、
そして新 品 種「KWS 8K879」を用いた新除草体系について整理します。

注意
農薬の登録内容は変更される場合があります。実際に使用する前には、必ず最新の農薬ラベル、地域の防除基準、メーカー資料、JA、普及センター等の情報を確認してください。本記事は薬剤選びの考え方を整理するものであり、特定条件での効果や安全性を保証するものではありません。混用や散布体系は、地域、土壌、気象、ビートの生育状況によって判断してください。

直播ビートの除草が難しい理由

直播ビートの除草が難しい理由は、ビートの初期生育が遅く、
雑草との競合に弱い時期が長いからです。

移植ビートでは、ある程度育った苗を畑に植えるため、初期から作物側にある程度の大きさがあります。一方、直播ビートでは、畑で発芽した小さなビートが、同じタイミングで出てくる雑草と競争することになります。

特に直播ビートでは、次のような点に注意が必要です。

  • 発芽や初期生育にばらつきが出やすい
  • ビートが小さい時期は薬害リスクが高い
  • 出芽直後から十分な除草剤処理を行いにくい
  • 雑草が大きくなると除草剤の効果が落ちやすい
  • 土壌水分によって土壌処理剤の効き方が変わる
  • 中耕とのタイミングを間違えると処理層が乱れる
  • シロザ、タデ類、ヒユ類、ハコベ、イヌホオズキなど、草種によって薬剤の得意不得意がある

つまり、直播ビートの除草剤防除は、薬剤名だけで決めるものではありません。どの草が、どれくらいの大きさで、ビートがどの葉齢なのかを見て判断する必要があります。

てんさいの除草体系で問題になりやすいこと

てんさいの現状の除草体系では、主に広葉雑草用の選択性除草剤を組み合わせて使います。軸になるのは、フェンメディファム、レナシル・PAC、メタミトロンの3系統です。

ただし、この体系には現場で悩ましい問題があります。

問題点 内容 現場への影響
残効期間が短い レナシル・PACやメタミトロンは土壌処理効果を持つが、残効は長期間ではなく、数週間程度で切れてくる 5月下旬から7月中旬頃までに、2〜3回程度の処理が必要になりやすい
現地混用が多い 殺草スペクトルを広げるため、2〜4剤を混用する場面がある 薬剤準備、計量、タンク洗浄、散布判断が煩雑になる
適期処理が難しい 雑草が大きくなりすぎると効果が落ちる 小麦、馬鈴しょ、豆類など他作物の作業と重なると、散布タイミングを逃しやすい
直播では特に難しい 出芽直後から十分な除草剤処理がしにくく、初期生育量も少ない 雑草と競合しやすく、処理が遅れると手取り除草が増えやすい
難防除雑草が残る 混用しても、ツユクサやイチビなどは残りやすい 最終的に手取り、局所処理、中耕などの追加対応が必要になる

ここが大事です。てんさいの除草剤体系は「効かない」のではなく、
「効かせるための条件が多い」です。
雑草が小さいうちに、ビートの状態を見て、天気を見て、土壌水分を見て、混用を考える。現場ではこの積み重ねが大切になります。

直播ビート除草剤の基本的な考え方

草が小さいうちに処理する

直播ビートの除草で一番大切なのは、雑草が小さいうちに処理することです。

シロザやタデ類、ヒユ類などは、小さいうちは除草剤で抑えやすいですが、大きくなると茎葉処理剤が効きにくくなります。特にシロザは大きくなると茎が太く硬くなり、最後は手取り除草という、作業になりがちです。

目安としては、雑草発生始期から発生揃期、できれば雑草1〜2葉期までに判断したいところです。

低薬量で回数を重ねる

直播ビートでは、発芽や生育にばらつきが出やすいため、一度に強く叩くよりも、
低薬量で複数回に分けて散布する体系が現実的です。

子葉展開期から本葉抽出期のビートはまだ小さく、薬害による生育遅延が出やすい時期です。そのため、雑草発生が早い場合は、ベタナール、ビートアップ(フェンメディファム)やハーブラック(メタミトロン)を通常より低めの薬量で処理し、
ビートの生育を見ながら2回目、3回目につなげる考え方になります。

茎葉処理と土壌処理を組み合わせる

除草剤には、大きく分けて雑草の葉から効かせる茎葉処理タイプと、土の表面に処理層を作って後から出てくる雑草を抑える土壌処理タイプがあります。

ビートアップフロアブルやベタナール乳剤は、主に雑草の葉にかけて効かせる茎葉処理型です。ハーブラックWDGやレナパック水和剤は、茎葉処理効果に加えて土壌処理効果も期待できます。

ただし、土壌処理効果は土壌水分に大きく影響されます。乾燥していると処理層がうまくできず、効果が不安定になることがあります。逆に過湿や砂土では、薬害リスクにも注意が必要です。

主な除草剤の特徴

ベタナール乳剤・ビートアップフロアブル

ベタナール乳剤とビートアップフロアブルは、どちらもフェンメディファムを有効成分とする除草剤です。主に雑草の葉から吸収される茎葉処理剤として考えます。

フェンメディファムは、シロザへの効果が高い薬剤として整理されています。シロザはビート畑で問題になりやすい代表的な広葉雑草なので、フェンメディファム剤は体系の中心になりやすい薬剤です。

項目 内容
主な商品名 ベタナール乳剤、ビートアップフロアブル
有効成分 フェンメディファム
作用機構 光合成阻害、HRAC 5系統
処理タイプ 主に茎葉処理
得意な雑草 シロザを中心とした一年生広葉雑草
直播での考え方 子葉展開期〜本葉抽出期は低薬量、本葉2葉展開後は体系の中心剤として使いやすい
注意点 高温、強日射、弱ったビート、生育ムラ、重複散布に注意

ビートアップフロアブルの登録では、直播てんさいにおいて、第2本葉展開後・中耕後の雑草発生揃期に400〜600ml/10a、希釈水量50〜100L/10a、収穫60日前まで、使用回数3回以内となっています。ベタナールでは500〜600ml/10a、希釈水量50〜80ℓ/10a収穫60日前まで、使用回数3回以内となっています。

一方、直播栽培の子葉展開期〜本葉抽出期では、ベタナール乳剤150〜200ml/10a、ビートアップフロアブル200〜350ml/10aの低薬量処理が整理されています。これは、直播の初期に薬害を避けながら、早く出た雑草を抑えるための考え方です。

つまり、ベタナール・ビートアップは「シロザを小さいうちに叩く薬剤」として重要ですが、ビートが小さいうちは薬害にも注意する必要があります。

ハーブラックWDG

ハーブラックWDGは、メタミトロンを有効成分とする除草剤です。

ハーブラックWDGは、茎葉処理効果と土壌処理効果の両方を持つ薬剤です。メタミトロンは、イガホビユやイヌホオズキの防除に重要とされています。また、メーカー資料ではタデ類、ヒユ類などの広葉雑草に高い効果を発揮するとされています。

項目 内容
商品名 ハーブラックWDG
有効成分 メタミトロン
作用機構 光合成阻害、HRAC 5系統
処理タイプ 茎葉処理+土壌処理
得意な雑草 タデ類、ヒユ類、イガホビユ、イヌホオズキなど
直播での使用量の目安 本葉2葉展開後で250〜350g/10a、子葉展開期〜本葉抽出期にも250〜350g/10aの体系が整理されている
注意点 メタミトロンは直播で薬害が発生しやすいため、移植栽培より使用量が低く設定されている

ハーブラックWDGの強みは、ビートアップやベタナールだけでは不安な草種、
特にヒユ類やイヌホオズキを意識した体系に入れやすい点です。

ただし、直播栽培では薬害が発生しやすいため、使用量が移植栽培より低く設定されています。効かせたい気持ちは分かりますが、薬量を上げれば勝ちという単純な話ではありません。

レナパック水和剤

レナパック水和剤は、レナシル・PAC水和剤です。茎葉処理効果に加えて、土壌処理効果も期待できる薬剤です。

レナシル・PACは、タニソバやイヌタデへの効果が高い薬剤として整理されています。タデ類が多い圃場では、レナパックをどう組み込むかが重要になります。

項目 内容
商品名 レナパック水和剤
有効成分 レナシル、PAC
作用機構 光合成阻害、HRAC 5系統
処理タイプ 茎葉処理+土壌処理
得意な雑草 タニソバ、イヌタデ、タデ類、シロザ、ハコベなど
直播での使用量の目安 本葉2葉期で200g/10a、中耕後の雑草発生始期で200〜300g/10a
注意点 土壌が乾燥していると処理層ができにくく、効果が不安定になる。砂土や軽い土壌では薬害にも注意

レナパックは、後発生の広葉雑草を抑えたい場面や、中耕後に土壌処理効果を狙いたい場面で使いやすい薬剤です。

ただし、土壌処理効果を期待する薬剤なので、土壌水分が重要です。乾きすぎていると処理層ができにくく、効果がぶれやすくなります。逆に、過湿や軽い土壌では薬害リスクも見なければいけません。

イネ科雑草が多い場合

ビートアップ、ベタナール、ハーブラック、レナパックは、主に広葉雑草を対象とした体系です。

イヌビエなどのイネ科雑草が多い圃場では、イネ科雑草用の除草剤を混用する場合があります。慣行体系例でも、クレトジム、キザロホップエチル、セトキシジムなどのイネ科雑草用成分が組み込まれています。

雑草別に見る薬剤選び

直播ビートの除草剤選びでは、雑草の種類を見分けることが重要です。薬剤には得意不得意があるため、草種を見ずに散布すると、効く草は消えても、効きにくい草だけが元気に残ることがあります。雑草界の選抜育成みたいなことを、こちらが手伝う必要はありません。

雑草名 小さい時の特徴 効きやすい薬剤の考え方 効きにくい薬剤・注意点 防除適期
シロザ 子葉は細長く、本葉は三角形〜卵形。新芽や葉裏に白っぽい粉が見えることがある ベタナール、ビートアップを軸に考える。後発生対策ではレナパックも検討 大きくなると茎が太く硬くなり、防除しにくくなる 発生始期〜1、2葉期
アカザ シロザに似るが、若い葉に赤みが出ることがある ベタナール、ビートアップ、レナパックを軸に考える シロザ同様、大きくなると残りやすい 発生始期〜小さいうち
タデ類 細長い子葉。本葉は細長い楕円形。葉の基部に鞘状の部分が見えることがある レナパック、ハーブラック、ビートアップ、ベタナールを組み合わせる 発生量が多い圃場では1回処理だけでは残草しやすい 発生始期〜発生揃期
タニソバ タデ科雑草。湿り気のある場所で出やすい レナパックを意識して体系に組み込む 湿った場所で後発生が続くことがある 小さいうち、発生が揃う前後
ヒユ類・イガホビユ 子葉は細長く、本葉は丸みのある楕円形。高温期に伸びやすい ハーブラックを軸に考える。ビートアップ、ベタナールとの組み合わせも検討 大きくなるのが早く、見逃すと一気に残草しやすい 発生始期〜1、2葉期
ハコベ 小さい丸葉〜卵形葉で、地面をはうように広がる ビートアップ、ベタナール、レナパックを軸に考える 密に発生すると株元を覆いやすい 発生始期〜小さいうち
イヌホオズキ 本葉は卵形でナス科らしい形。後に白い花、黒い実をつける ハーブラックを意識。発生初期の防除が重要 大きくなると残草し、実がつくと汚損の問題になる 小さいうち。見つけたら早め
スカシタゴボウ アブラナ科。ロゼット状に広がる 発生初期に広葉雑草体系で対応を検討 大きくなると薬液がかかりにくい ロゼットが小さいうち
ナズナ 小さいロゼット状。葉に切れ込みがある 発生初期に広葉雑草体系で対応 越年雑草として大きくなっている場合は効きにくい 発生初期
ツユクサ 葉が厚く、茎が地面をはうように伸びる 主力3剤だけでは残りやすい難防除雑草として注意 混用しても残りやすい場合がある。手取りや中耕も検討 小さいうち
イネ科雑草 細い葉が直立。広葉雑草とは見た目が違う クレトジム、キザロホップエチル、セトキシジムなどイネ科用薬剤を検討 ビートアップ、ハーブラック、レナパック中心の広葉体系では不十分 薬剤ごとの登録葉齢に合わせる

散布時期の目安

直播ビートの除草剤散布は、ビートの葉齢と雑草の大きさをセットで見る必要があります。

ビートだけ見てもダメですし、雑草だけ見てもダメです。作物と雑草の両方を見ながら、薬剤を選ぶ必要があります。

時期 圃場で見るポイント 除草の考え方
播種後 土壌水分、砕土、クラスト、雑草の発生予測 雑草発生が早い圃場では初回処理を早めに想定する
ビート発芽始め 出芽揃い、欠株、生育ムラ 薬害リスクが高いため、無理な処理は避ける
ビート本葉1葉期 雑草が先行していないか確認 低薬量処理が必要か判断する
ビート本葉2葉期 ビートの生育が揃っているか、雑草の種類と大きさ 主力剤を使いやすくなる時期。ビートアップ、ベタナール、ハーブラック、レナパックの組み合わせを検討
ビート本葉3〜4葉期 後発生のシロザ、タデ類、ヒユ類 2回目、3回目処理や中耕との組み合わせを検討
雑草発生始期 草種を確認。シロザか、タデ類か、ヒユ類か 最も重要な判断時期。遅れると残草しやすい
雑草1〜2葉期 薬剤が効きやすい大きさか確認 茎葉処理剤の適期。散布条件を見て早めに対応
雑草が大きくなりすぎた場合 草丈、茎の硬さ、圃場内の残草量 除草剤だけで無理をせず、中耕や手取りも検討
中耕前後 畦間雑草、株間雑草、処理層の乱れ 中耕で畦間を処理し、株間は除草剤で補う
後発生対策 シロザ、タデ類、イヌホオズキの残草 土壌処理効果のある薬剤や手取り除草を組み合わせる

直播ビートでの混用・散布スケジュール例

直播ビートでは、発芽のばらつきに合わせて、低薬量で回数を重ねる防除が考え方の基本になります。

以下は、ビートアップ、ハーブラック、レナパックを組み合わせた一例です。
実際の散布では、必ず農薬ラベル、地域防除基準、JA、普及センター等の指導を確認してください。

散布時期 薬剤の組み合わせ例 10a当たり 対象・目的 注意点
1回目 雑草発生始期 ビートアップ 100ml + ハーブラック 100g 初期の広葉雑草、特にタデ類などを早めに叩く ビートの出芽揃い、生育ムラ、高温、霜後に注意
2回目 1回目から7〜10日後 ビートアップ 200ml + ハーブラック 200g 成長した雑草や1回目で残った雑草を抑える 雑草が大きくなりすぎる前に判断する
3回目 2回目から7〜10日後 ビートアップ 300ml + レナパック 150g シロザなどの後発生を土壌処理効果で抑える 乾燥時は土壌処理効果が不安定になりやすい。軽い土壌では薬害注意

なぜ低薬量で回数を重ねるのか

直播ビートは、同じ圃場内でも発芽や生育にばらつきが出やすい作型です。大きい株に合わせて強く処理すると、小さい株に薬害が出る可能性があります。

そのため、最初から高い薬量で一発処理するのではなく、雑草が小さいうちに低薬量で処理し、その後の発生状況を見ながら2回目、3回目を組み立てる考え方になります。

現地混用の考え方

てんさいの現場では、殺草スペクトルを広げるために、
ベタナールやビートアップ、ハーブラック、レナパックを混用する場面があります。

現地混用する場合、てんさいへの薬害を防ぐために、経験的に薬量を最大使用量の半量程度にすることがあります。これは、混用で効果を広げる一方で、作物への負担を抑えるための考え方です。

ただし、混用は作業が煩雑になります。薬剤の計量、混用順、タンク内での攪拌、散布水量、展着剤の有無など、確認することが一気に増えます。

展着剤レナテンなどを加用する目的

ベタナール、ビートアップ、ハーブラック、レナパックを使う体系では、薬液を雑草の葉に広がりやすくし、茎葉処理効果を安定させる目的で、展着剤を加用することがあります。

混用事例では、レナテンなどの展着剤を100ml/10a加用する体系が示される場合があります。ただし、展着剤は多ければよいというものではありません。

高温時、乾燥時、ビートが弱っている時、生育ムラが大きい時に展着剤を加えると、薬害リスクが高まる場合があります。展着剤の種類や量は、必ずラベル、地域防除基準、JA、普及センター等の指導を確認してください。

中耕前後はなぜ間隔を空けるのか

中耕作業を行う場合、除草剤散布の前後1週間程度は間隔を空ける考え方があります。

理由は、中耕によって土壌処理層が乱れることがあるためです。レナパックやハーブラックのように土壌処理効果を狙う薬剤では、中耕直後や直前の散布で効果が安定しない場合があります。

また、中耕直後はビートの根や株元にストレスがかかっていることもあります。
そこに除草剤処理が重なると、薬害リスクが上がる場合があります。

中耕は、畦間雑草の処理、土壌の通気性改善、地温上昇、表面のクラスト改善などに役立ちますが、除草剤との前後関係を間違えると効果を落とすことがあります。

薬害を避けるための注意点

直播ビートの除草剤防除では、雑草を抑えることと同じくらい、ビートに薬害を出さないことが重要です。

条件 注意する理由 対応の考え方
高温時 薬液の吸収が強まり、薬害が出やすい 30℃前後の高温時は避け、朝夕や曇天時を検討する
低温時 ビートの回復が遅れやすい 低温が続く時期や霜の前後は避ける
霜の前後 ビートが弱っており、薬害が出やすい 回復を確認してから散布する
乾燥時 土壌処理層が作られにくく、効果が不安定になる レナパック、ハーブラックなど土壌処理効果を狙う場合は特に注意
過湿時 根が弱り、薬害や生育停滞が出やすい 圃場条件が落ち着いてから判断する
砂土・軽い土壌 薬剤が効きすぎる、または移動しやすい ラベルの注意事項を必ず確認する
生育ムラ 小さい株に薬害が出やすい 圃場全体の平均ではなく、弱い部分も見る
重複散布 局所的に薬量が高くなる 枕地や旋回部の重なりに注意する
中耕前後 処理層の乱れや根傷みにより、効果不安定や薬害につながる場合がある 前後1週間程度の間隔を目安に、地域指導を確認する
展着剤の入れすぎ 薬液の付着や吸収が強くなりすぎる 推奨量を守る
弱ったビートへの散布 薬剤処理後の回復力が落ちている 湿害、低温害、肥料焼け、病害の有無を確認する
薬量を上げすぎる 雑草への効果より先にビートへの負担が大きくなる場合がある ラベル範囲内で、草の大きさとビート葉齢を見て判断する

新 品 種「KWS 8K879」を用いた新除草体系について

ここまで整理したビートアップ、ベタナール、ハーブラック、レナパックを組み合わせる体系は、現在のてんさい除草の基本的な考え方です。

一方で、近年は新 品 種「KWS 8K879」と専用除草剤「コンビソOD」を組み合わせた新除草体系も登場しています。

この新体系は、従来のてんさい除草体系が抱えていた問題、つまり「複数回散布が必要」「2〜4剤の現地混用が煩雑」「直播栽培では出芽直後から十分な処理が難しい」という課題を大きく改善できる可能性があります。

KWS 8K879とは

KWS 8K879は、ALS阻害型除草剤に耐性を持つてんさい品種です。

この品種は、遺伝子組換え作物ではなく、細胞培養技術と一般的な育種方法を用いて作出された品種とされています。ざっくり言えば、専用除草剤に耐えられる性質を持ったてんさいです。

ただし、ここで絶対に間違えてはいけないのは、
コンビソODは「ALS阻害剤耐性てんさい」専用の除草剤だという点です。
一般のてんさい品種に使うと強い薬害が出る恐れがあります。
専用品種と専用除草剤をセットで考える必要があります。

コンビソODとは

コンビソODは、チエンカルバゾンメチルとホラムスルフロンを有効成分とするALS阻害型除草剤です。

ホラムスルフロンは主に茎葉処理効果を持ち、チエンカルバゾンメチルは茎葉処理効果と土壌処理効果を併せ持つとされています。この2成分を組み合わせることで、広い殺草スペクトルと長い残効が期待されます。

項目 内容
除草剤名 コンビソOD
対象品種 てんさい ALS阻害剤耐性品種
有効成分 チエンカルバゾンメチル、ホラムスルフロン
作用機構 ALS阻害
対象雑草 一年生雑草
直播栽培での使用時期 子葉期以降、雑草発生始期〜広葉雑草4葉期。ただし収穫90日前まで
使用量 50〜100ml/10a
希釈水量 25〜100L/10a
使用回数 1回
使用方法 雑草茎葉散布または全面散布

新除草体系のメリット

KWS 8K879とコンビソODを組み合わせた新除草体系の大きなメリットは、省力化です。

従来体系では、雑草が生え揃う5月下旬から、てんさいの地上部が圃場表面を覆う7月中旬以降までの間に、数週間ごとに2〜3回程度の除草剤処理が必要になることがあります。

一方、資料の実証試験では、コンビソODを1回処理した区で、7月下旬の残草調査時に残草が確認されず、その後の手取り除草も必要なかったとされています。

従来体系では、2〜3回の除草剤処理を行った後でも残草があり、手取り除草が必要だった試験地もあります。こう見ると、新体系の省力化効果はかなり大きいです。除草剤散布と手取り除草に追われる現場からすると、これはなかなか魅力があります。

比較項目 従来体系 KWS 8K879+コンビソOD体系
除草剤処理回数 2〜3回程度になりやすい 条件が合えば1回処理で抑えられる可能性
混用 2〜4剤の現地混用になることがある 専用剤1剤で体系を組める
手取り除草 残草量によって必要になりやすい 雑草多発圃場でも省略できる可能性
直播初期の処理 出芽直後は薬害リスクがあり、十分な処理が難しい 耐性品種では子葉期以降から処理できる登録
注意点 適期処理、混用、薬害、残草管理が必要 専用品種必須、ドリフト、抵抗性雑草、収量性に注意

新体系で注意したいこと

KWS 8K879とコンビソODの新除草体系は、省力化の面では大きな可能性があります。
、、、、ただし、条件付きです。

注意したい点は、次の通りです。

  • コンビソODはALS阻害剤耐性てんさい専用であり、一般品種には使用できない
  • 一般のてんさい品種に薬液がかかると、強い薬害が出る恐れがある
  • 他作物へのドリフトにも十分注意が必要
  • 使用回数は1回であり、必ず守る必要がある
  • ALS阻害型除草剤は抵抗性雑草の発生リスクに注意が必要
  • 土壌が乾燥している条件では、土壌処理効果が十分に発揮されにくい
  • 雑草の葉齢が進みすぎると、特にシロザなどで残草が目立ちやすい
  • KWS 8K879は、従来主力品種と比べて収量性に課題があるとされている

特に重要なのは、専用品種と専用除草剤を必ずセットで使うことです。
コンビソODは、通常のてんさい品種にかかると強い薬害が出る恐れがあります。
隣接圃場や散布時のドリフトには十分な注意が必要です。

また、コンビソODはALS阻害型除草剤です。
ALS阻害剤は抵抗性雑草が問題になりやすい系統でもあります。北海道畑作では輪作があるため、水田よりリスクは下がると考えられますが、
同じ作用機構に頼りすぎるのは避けたいところです。

どんな圃場で新体系の意味が大きいか

KWS 8K879とコンビソODの新体系は、特に雑草が多く、従来体系では手取り除草が多くなりやすい直播栽培圃場で意味が大きいと考えられます。

従来体系で2〜3回散布しても残草があり、手取り除草に時間がかかる圃場では、新体系による省力化の価値が出やすくなります。

一方で、収量性の課題や、専用品種の導入、ドリフト対策、抵抗性雑草対策などもあるため、すべての圃場で単純に置き換えればよいという話ではありません。

つまり、新体系は「夢の除草剤」というより、
「条件が合う圃場では大きな省力化につながる選択肢」と考えるのが現実的です。

まとめ 直播ビートの除草剤は草種とタイミングで考える

直播ビートの除草剤防除では、ビートアップ、ベタナール、ハーブラック、レナパックを、草種とタイミングに合わせて使い分けることが重要です。

特に意識したいのは、次の6つです。

  • シロザ、タデ類、ヒユ類、ハコベ、イヌホオズキなど、圃場で多い草種を確認する
  • 雑草が大きくなる前、発生始期〜1、2葉期を逃さない
  • 直播ビートでは低薬量で回数を重ねる散布体系を基本に考える
  • 展着剤は効果を高める一方で、薬害リスクにも関係する
  • 中耕前後は除草剤の効果や薬害に影響するため、間隔を意識する
  • KWS 8K879とコンビソODの新体系は、省力化の可能性がある一方で、専用品種、ドリフト、抵抗性雑草、収量性に注意する

除草剤は、何を使うかだけでは決まりません。いつ使うか、どの草に使うか、ビートが耐えられる状態か。この3つを見て判断する必要があります。

さらに新体系を検討する場合は、「省力化できるか」だけでなく、
「その品種と除草剤の組み合わせが自分の圃場条件に合うか」まで見る必要があります。

最後にもう一度ですが、農薬登録内容は変更される場合があります。実際の使用前には、必ず最新の農薬ラベル、地域の防除基準、メーカー資料、JA、普及センター等の情報を確認してください。

参考文献・参照資料

  • 農薬登録情報提供システム ビートアップフロアブル
  • ホクサン株式会社 ハーブラックWDG 製品情報
  • 農薬登録情報提供システム レナパック水和剤
  • 農薬登録情報提供システム コンビソOD
  • 植調 Vol.56 No.7 除草剤耐性てんさいを用いた新除草体系
  • 北海道 農作物病害虫・雑草防除ガイド
  • 農研機構 写真で見る外来雑草 シロザ
  • 農研機構 写真で見る外来雑草 ヒユ科
  • 農研機構 警戒すべき雑草 イヌホオズキ
  • 日本雑草学会 シロザ解説
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