銅剤とは?効く仕組み・種類・薬害・残効を分かりやすく解説

農業
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長い歴史があり、今でも現場で使われ続けている農薬をご存じでしょうか?

こんにちはチーパパです。

そう、その一つが銅剤!!

銅剤は昔から使われてきた殺菌剤ですが、現在でも農家の防除体系から家庭菜園まで幅広く利用されています。

特に注目したいのが、一般的な殺菌剤では対応しにくい細菌病の予防にも使えることです。

では、なぜ銅剤はこれほど長く使われ続けているのでしょうか?

その理由は、銅イオンが病原菌の働きを抑え、
作物の表面で感染を防ぐ仕組みにあります。

一方で、銅剤は病気が出てから治す薬ではありません。また、昔から使われているからといって、どんな条件でも安全に使えるわけではありません。

使う時期や天候、作物の状態によっては、葉焼けや褐色斑点などの薬害が発生することもあります。

銅剤とはどのような農薬なのか

銅剤は、銅を利用して病原菌を抑える殺菌剤です。

散布された銅化合物の粒子から銅イオンが溶け出し、病原菌の酵素、たんぱく質、細胞膜などに作用します。

銅剤の大きな特徴は、糸状菌と呼ばれるカビの仲間だけでなく、細菌が原因となる病害にも使用されることです。

殺菌剤の中には、特定の糸状菌には高い効果を示しても、細菌病にはほとんど効果を期待できないものがあります。

そのため、軟腐病、かいよう病、斑点細菌病など、細菌病を予防するときに銅剤が選択肢となります。

ただし、銅剤であれば、どの商品でも同じ病害に使えるわけではありません。

登録作物、対象病害、希釈倍数、散布液量、使用時期、収穫前日数、使用回数は商品によって異なります。使用前には、必ず農薬登録と製品ラベルを確認してください。

銅剤はなぜ昔から使われているのか

銅を利用した病害防除の代表例が、ボルドー液です。

ボルドー液は、硫酸銅と石灰を組み合わせて調製する殺菌剤で、
19世紀後半から植物病害の防除に使われてきました。

水に溶けやすい硫酸銅をそのまま使用すると、銅イオンが多く放出され、作物にも強く作用する可能性があります。

そこで石灰を加え、銅イオンが急激に放出されるのを抑えながら、銅を作物表面へ残す方法が利用されました。

現在では、昔ながらのボルドー液だけでなく、水和剤、フロアブル剤など、調製や散布がしやすい銅剤が数多く登録されています。

銅剤が現在でも使われている主な理由は、次のとおりです。

  • 細菌病にも使用できる
  • 一部の糸状菌病にも使用できる
  • 幅広い病原菌の複数部位に作用する
  • 予防剤として防除体系へ組み込みやすい
  • 比較的低コストで使える製品がある
  • 長年の使用実績がある

銅剤は、FRACコードM01に分類される多作用点接触型殺菌剤です。

病原菌の特定の酵素だけを狙うのではなく、複数の酵素やたんぱく質などへ作用します。そのため、単一作用点型の殺菌剤と比べると、一般的には耐性リスクを管理しやすい薬剤として位置づけられています。

古い農薬だから時代遅れなのではなく、現在の防除体系でも役割が残っている農薬なのです。

銅剤が効く仕組み

銅化合物から銅イオンが溶け出す

銅剤を葉や茎へ散布すると、銅化合物の細かな粒子が作物表面へ付着します。

この粒子が付着しただけでは、銅のすべてが直ちに病原菌へ作用するわけではありません。

雨、朝露、霧などによって葉面に水分が加わると、銅化合物の一部から銅イオンが溶け出します。

銅剤が効くまでの流れを簡単にすると、次のようになります。

  1. 銅剤を葉や茎へ散布する
  2. 銅化合物の粒子が作物表面へ付着する
  3. 雨、朝露、霧などの水分に触れる
  4. 銅化合物の一部から銅イオンが溶け出す
  5. 銅イオンが病原菌の酵素、たんぱく質、細胞膜などへ作用する
  6. 胞子の発芽、菌糸の伸長、細菌の増殖が抑えられる
  7. 作用する量や時間によっては、病原菌が死滅する

銅イオンは、病原菌の複数の代謝機能を乱します。

その結果、胞子が発芽できない、菌糸が伸びない、細菌が増殖できないといった状態になります。

銅剤には、病原菌を死滅させる殺菌作用だけでなく、発芽や増殖を抑える静菌的な作用もあります。

病気を治すより葉の表面で待ち伏せする

銅剤には病原菌へ直接作用する力がありますが、基本的には作物体内へ深く浸透しません。

すでに葉や茎の内部へ侵入した病原菌を追いかけて治療する薬ではなく、作物の表面に付着して働く保護殺菌剤です。

イメージとしては、病気になった作物を治療する医薬品というより、作物表面に見張りを配置するような農薬です。

病原菌が葉面へ付着した段階で銅イオンが作用し、発芽や増殖を抑えて、組織内部への侵入を防ぎます。

そのため、病気が大きく広がってから散布するより、感染前から発病初期に散布することが重要です。

発病後に散布しても意味がないのか

すでに発病している場合でも、銅剤の散布がまったく無意味というわけではありません。

病斑表面から出てくる胞子や細菌を抑えたり、まだ感染していない葉や株を守ったりする役割は期待できます。

ただし、すでに腐敗した組織や、内部まで侵入した病原菌を銅剤で元に戻すことはできません。

発病後の散布は、病斑を治療するためではなく、未感染部分を保護し、周囲への感染拡大を抑えるための防除と考えた方が分かりやすいでしょう。

銅剤はどのような病害に使われるのか

銅剤は、細菌病と一部の糸状菌病の予防に使われます。

細菌による主な病害

  • 軟腐病
  • かいよう病
  • 斑点細菌病
  • 黒斑細菌病
  • 黒腐病
  • せん孔細菌病
  • 褐斑細菌病
  • 花蕾腐敗病

糸状菌などによる主な病害

  • 疫病
  • べと病
  • 炭疽病
  • 黒星病
  • 褐斑病
  • そうか病

ただし、ここに病名があるからといって、手元にある銅剤をそのまま使えるわけではありません。

同じ銅成分を含む商品でも、登録されている作物や病害は異なります。

また、銅以外の有効成分を組み合わせた混合剤では、もう一方の有効成分の使用回数や耐性管理も確認する必要があります。

銅剤の種類によって何が違うのか

銅剤の種類の違いとは、銅の殺菌力そのものの違いというより、殺菌成分である銅イオンを、葉の上でどのように保持し、どのくらいの速さで供給するかの違いです。

水酸化第二銅でも、塩基性塩化銅でも、塩基性硫酸銅でも、病原菌へ作用する中心は銅イオンです。

異なるのは、銅を保持している化学的な形、粒子の細かさ、葉面への付着性、水分に触れたときの銅イオンの出方などです。

銅成分 分類 銅を保持する形 銅イオン供給のイメージ 代表的な特徴
水酸化第二銅 無機銅 銅と水酸化物が結合した粒子 細かな粒子から効率よく供給 微粒子化された製品が多く、葉面を広く覆いやすい
塩基性塩化銅 無機銅 銅を塩基性塩化物として保持 溶けにくい粒子から徐々に供給 古くから使われる代表的な固定銅剤
塩基性硫酸銅 無機銅 銅を塩基性硫酸塩として保持 葉面に残りながら比較的穏やかに供給 ボルドー系銅剤などに使われる
有機銅 有機銅 銅を有機化合物と結合 無機銅とは異なる形で作用 無機銅とは登録上の扱いが異なる場合がある

水酸化第二銅

水酸化第二銅は、無機銅剤の一つです。

化学式では、Cu(OH)2と表されます。

水には溶けにくい成分ですが、酸性条件になると溶解が進み、銅イオンを放出しやすくなります。

水酸化第二銅を含む農薬には、微粒子化された製品が多くあります。

粒子が細かいほど、同じ重量でも水分に触れる表面積が広くなります。そのため、作物表面を均一に覆いやすく、効率よく銅イオンを供給しやすくなります。

代表的な農薬には、コサイド3000などがあります。

一方で、粒子と水分が接触する面積が大きいため、酸性条件や長時間の葉面のぬれが重なる場合には、薬害へ注意が必要です。

水酸化第二銅は、細かな粒子で葉面を広く覆い、銅イオンを効率よく供給するタイプと考えると分かりやすいでしょう。

塩基性塩化銅

塩基性塩化銅は、銅、水酸化物、塩化物から構成される無機銅化合物です。

名称には塩化銅と入っていますが、水によく溶ける単純な塩化銅とは性質が異なります。

水酸化物を含む塩基性の構造によって、銅を水に溶けにくい状態で保持しています。

葉面に付着した塩基性塩化銅の粒子が、銅イオンを蓄えておく貯蔵庫のような役割を果たします。

雨や朝露などの水分、酸性条件などに触れることで、粒子から銅イオンが少しずつ放出されます。

代表的な登録農薬には、商品名がボルドーとなっている製品などがあります。

ただし、商品名のボルドーと、硫酸銅と石灰を使って自家調製する昔ながらのボルドー液は、必ずしも同じものではありません。

塩基性塩化銅は、銅を溶けにくい形で葉面へ置き、必要な銅イオンを徐々に供給するタイプです。

塩基性硫酸銅

塩基性硫酸銅は、銅、水酸化物、硫酸基からなる無機銅化合物です。

名称には硫酸銅と入っていますが、水に溶けやすい硫酸銅そのものとは異なります。

水酸化物を含む塩基性の構造によって、水への溶けやすさが抑えられています。

作物表面に付着した粒子から、銅イオンを少しずつ供給し、予防効果を発揮します。

代表的な農薬には、Zボルドーなどがあります。

ただし、塩基性硫酸銅であれば、必ず水酸化第二銅より薬害が少ない、必ず残効が長いという意味ではありません。

同じ塩基性硫酸銅でも、粒子径、剤型、補助成分、付着性、希釈倍数によって、薬効、耐雨性、薬害の出方が異なります。

塩基性硫酸銅は、銅を葉面へ残しながら、比較的穏やかに銅イオンを供給するタイプと説明できます。

有機銅

農薬で有機銅と呼ばれる代表的な有効成分には、8-ヒドロキシキノリン銅があります。

これは、銅と8-ヒドロキシキノリンという有機化合物が結合した成分です。

無機銅の粒子から銅イオンを放出する銅剤とは、銅の保持方法が異なります。

ただし、有機銅は無機銅より必ず効果が高い、薬害が少ない、安全という意味ではありません。

また、有機銅という名称は、有機栽培で自由に使えるという意味でもありません。

有機銅剤は、無機銅剤とは農薬登録上の使用回数などの扱いが異なる場合があります。

有機銅は、銅を有機化合物と結合させ、無機銅とは異なる形で病原菌へ作用させるタイプと考えるとよいでしょう。

銅剤の効果は有効成分の含有率だけでは比較できない

農薬の表示を見ると、水酸化第二銅46%、塩基性塩化銅84%など、異なる数字が記載されています。

この数字だけを見ると、84%の製品の方が強く効くように感じるかもしれません。

しかし、有効成分の含有率を、そのまま殺菌力として比較することはできません。

銅化合物によって、化合物全体に占める金属銅の割合が異なるためです。

さらに、実際の薬効には次の条件が影響します。

  • 金属銅としての散布量
  • 粒子の細かさ
  • 葉面を均一に覆えるか
  • 葉面への付着性
  • 降雨に対する耐雨性
  • 銅イオンの溶出速度
  • 希釈倍数と散布液量
  • 散布液や葉面水のpH
  • 葉面がぬれている時間

酸性条件では固定銅の溶解性が高まり、初期の作用が強くなる一方で、残効が短くなり、薬害リスクが高まることがあります。

成分名や含有率だけで、一番強い銅剤、一番安全な銅剤を決めることはできません。

雨が降ると銅剤の効果はなくなるのか

銅剤は作物表面に付着して働くため、散布直後に強い雨が降ると、十分に乾く前に流される可能性があります。

一方、散布後に適度に乾き、葉面へ付着した後であれば、降雨後も一定の予防効果が残る場合があります。

ただし、耐雨性は銅成分の種類だけでは決まりません。

同じ銅成分でも、粒子の細かさ、補助成分、展着性、製剤設計によって、雨への強さが異なります。

銅剤は降雨や頭上かん水によって徐々に葉面から流れ、土壌へ移動するため、防除効果を維持するには作物の生育や天候に合わせた管理が必要です。

新しく伸びた葉は守られていない

銅剤は、散布した部分を守る農薬です。

散布後に展開した新葉には、銅剤が付着していません。

作物の生育が速い時期には、古い葉に銅剤が残っていても、中心部の新葉は無防備になっていることがあります。

銅剤の残効を判断するときは、散布してから何日経ったかだけでなく、新葉がどのくらい展開したかも確認する必要があります。

なぜ朝露や長時間のぬれで薬害が出やすいのか

葉面の水分が銅イオンを溶け出させる

銅剤は、雨、朝露、霧などの水分に触れることで銅イオンを放出します。

水分は銅剤を働かせるために必要です。

しかし、葉が長時間ぬれ続けると、銅化合物と水分が接触する時間も長くなります。

その結果、葉面の水膜へ銅イオンが供給される時間が長くなり、病原菌だけでなく、作物の細胞も銅イオンにさらされ続けます。

銅剤による薬害は、葉がぬれている条件で発生しやすく、特に長時間の重い朝露、雨、霧などが薬害リスクへ影響するとされています。

銅イオンは作物にも作用する

銅イオンは、病原菌だけを選んで攻撃する物質ではありません。

濃度が高くなったり、接触時間が長くなったりすると、作物の細胞膜、酵素、たんぱく質などにも作用します。

作物の細胞が傷つくと、次のような薬害症状につながる可能性があります。

  • 葉焼け
  • 褐色や黒色の斑点
  • 葉先枯れ
  • 新葉の生育障害
  • 果実表面のしみ
  • 果実や葉の汚れ

つまり、銅剤の防除効果と薬害は、どちらも銅イオンの作用によって起こります。

病原菌へ作用する範囲なら防除効果となり、作物の細胞へ強く作用すると薬害になるのです。

朝露があると接触時間が長くなる

朝露が残った葉には、すでに薄い水の膜ができています。

その状態で銅剤を散布すると、銅化合物が散布直後から水分に触れます。

さらに、早朝は気温が低く、湿度が高いことが多いため、葉面の水分や散布液が乾くまでに時間がかかります。

その結果、銅イオンが葉面に存在する時間が長くなり、作物が銅イオンにさらされる時間も長くなります。

銅剤は、湿っていて気温が低いなど、薬液の乾燥が遅い条件で薬害を起こしやすいとされています。

特に、次のような条件が重なる場合は注意が必要です。

  • 朝露や降雨で葉がぬれている
  • 曇天や高湿度で薬液が乾きにくい
  • 風が弱く、葉の重なった部分が乾かない
  • 若葉や新芽へ散布する
  • 作物が高温、乾燥、過湿などで弱っている
  • 薬液が葉先や葉のくぼみにたまる
  • 酸性の薬剤や葉面散布資材を混用する
  • 展着剤によって葉面のぬれや浸透が強くなる

若い植物組織は銅による障害を受けやすく、高温条件も薬害リスクを高める要因として挙げられています。

朝露で薬液が薄まっても安全とは限らない

朝露があると薬液が薄まるため、薬害が出にくくなるようにも感じます。

しかし、銅剤の薬害は散布液の瞬間的な濃度だけでは決まりません。

ぬれた葉へ散布すると、薬液が葉面を流れ、葉先、葉脈のくぼみ、葉の付け根などへ集まることがあります。

その状態で水分が蒸発すると、一部へ銅剤の粒子が多く残る可能性があります。

また、散布液が多少薄まっても、葉面が長時間ぬれていれば、銅イオンが作物へ接触する時間は長くなります。

銅剤の薬害は、次の条件を総合して考える必要があります。

  • 葉面へ付着した銅の量
  • 銅イオンが放出される速さ
  • 葉面がぬれている時間
  • 散布液や葉面水のpH
  • 薬液が一部へ集中していないか
  • 作物や品種の銅に対する感受性

酸性条件では銅イオンが多く放出されやすい

多くの無機銅剤は、銅を水に溶けにくい形で保持しています。

しかし、散布液や葉面の水膜が酸性側へ傾くと、銅化合物の溶解が進み、銅イオンが多く放出されやすくなります

銅イオンが急激に増えると、病原菌への作用だけでなく、作物への刺激も強くなります。

そのため、酸性の農薬、亜リン酸系資材、一部の葉面散布肥料などとの混用では注意が必要です。

また、展着剤によって銅剤が葉面へ広がりやすくなったり、気孔やクチクラとの接触が増えたりすると、薬害が強まる可能性があります。

混用の可否は、メーカーの混用表と製品ラベルを確認してください。

朝露がある日は絶対に散布できないのか

朝露が残っていれば、必ず薬害が発生するわけではありません。

実際の薬害リスクは、製品、希釈倍数、作物、品種、葉齢、散布液量、散布後の天候などによって変わります。

ただし、薬害をできるだけ避けるなら、朝露が乾いてから散布する方が安全です。

散布後にも、薬液が適度に乾く時間を確保します。

夕方に散布する場合も、夜露が出る直前では、十分に乾燥しない可能性があります。

水分は銅剤の効果を引き出すスイッチですが、葉が長時間ぬれ続けると、作物も銅イオンにさらされ続けます

銅剤は一度乾けば薬害が出にくくなるのか

銅剤を散布した後、薬液が適度に乾いて葉面へ定着すれば、散布液が長時間ぬれたままの場合と比べて、薬害は出にくくなる傾向があります。

銅剤の薬害を起こす中心は、葉面へ付着した銅化合物の粒子そのものではなく、水分によって溶け出した銅イオンです。

葉面が乾くと水の膜がなくなるため、銅イオンの放出と、作物細胞への連続的な接触はいったん弱まります。

そのため、銅剤の散布後は、薬液が適度に乾く時間を確保できる条件の方が、薬害を避けやすくなります。

ただし、乾燥後の銅剤が完全に安全になるわけではありません。

葉面に残った銅化合物は、次の雨、朝露、霧などで再びぬれると、銅イオンを少しずつ放出します。

この働きによって銅剤の予防効果が続きますが、長時間のぬれ、酸性条件、若葉、過剰な付着などが重なると、乾燥後でも薬害が発生する可能性があります。

銅剤は、一度乾かすことで初期の薬害リスクを下げやすくなりますが、乾けば薬害が絶対に出ない農薬になるわけではありません。

葉面に残った銅剤は、病原菌へ銅イオンを供給する貯蔵庫です。散布時の天候だけでなく、その後の朝露や降雨条件まで含めて管理することが大切です。

銅剤の薬害は大丈夫なのか

銅剤は長年使われてきた農薬ですが、薬害が出ない農薬ではありません。

登録された希釈倍数と使用方法を守っても、作物、品種、生育段階、気象条件などによっては薬害が発生する可能性があります。

特に注意したい条件は、次のとおりです。

  • 高温時
  • 強い日射が当たる時間帯
  • 展開直後の若葉や新芽
  • 作物が乾燥、過湿、根傷みなどで弱っているとき
  • 登録濃度より濃い散布
  • 重複散布や過剰な散布液量
  • 薬液が葉先やくぼみにたまった場合
  • 散布後に葉が長時間ぬれた場合
  • 酸性の薬剤や資材との混用
  • 展着剤の種類や加用量が適切でない場合
  • 銅に弱い作物や品種への散布

銅剤の薬害を防ぐには、銅剤を弱く効かせるのではなく、病原菌へ必要な銅イオンを供給しながら、作物が過剰な銅イオンにさらされない条件を選ぶことが重要です。

塩基性炭酸マグネシウムを含む銅剤がある理由

銅剤の中には、製品を設計する段階から、塩基性炭酸マグネシウムなどを配合しているものがあります。

代表例の一つが、Zボルドーです。

Zボルドーには、有効成分として塩基性硫酸銅58.0%が含まれています。

さらに、その他成分として、塩基性炭酸マグネシウム6.0%と塩基性硫酸亜鉛15.0%が配合されています。

塩基性の成分を製剤へ組み込むことで、銅イオンの急激な放出を抑え、銅による作物への刺激を軽減する考え方があります。

ただし、これは製品の処方として、成分の種類や量を調整したうえで配合されているものです。

市販の炭酸マグネシウムを別の銅剤へ自己判断で加えてよいという意味ではありません。

また、薬害軽減のために炭酸カルシウム水和剤の加用が指定されている製品や作物とは、分けて考える必要があります。

別の資材を混用、加用するときは、必ず製品ラベルやメーカーの技術資料を確認してください。

銅剤は比較的安全な農薬なのか

銅剤の中には、製剤毒性が普通物に区分されている製品もあります。

ただし、普通物という表示は、無害、素手で扱える、何度使っても安全、作物に薬害が出ないという意味ではありません。

銅剤を使用するときも、製品ラベルに従い、手袋、マスク、保護眼鏡、長袖など、指定された保護具を使用します。

また、銅は元素です。

散布後に分解して完全に消える有機化合物ではないため、銅剤だけへ過度に依存しないことも大切です。

発病株の除去、排水対策、風通しの改善、健全苗の使用、残さの処理、他系統薬剤との組み合わせなども行います。

昔から使われていることと、無制限に安全であることは別の話です。

銅剤を使うメリット

  • 細菌病にも使用できる
  • 一部の糸状菌病にも登録がある
  • 感染前の予防剤として使いやすい
  • 多作用点型で防除体系へ組み込みやすい
  • 比較的低コストの製品がある
  • 長年の使用実績がある
  • 作物表面に残り、一定期間予防効果を発揮する

特に、細菌病を対象に予防防除を組み立てるとき、銅剤は現在でも有力な選択肢です。

銅剤を使うデメリット

  • すでに発病した組織を治療する力は弱い
  • 高温時や若葉では薬害に注意が必要
  • 作物や品種によって銅への感受性が異なる
  • 酸性資材などとの混用に注意が必要
  • 雨によって葉面から流される可能性がある
  • 散布後に展開した新葉は守れない
  • 製品によっては葉や果実に汚れが残る
  • 銅剤であればすべての細菌病へ使えるわけではない

価格だけを見れば低コストでも、薬害や汚れによって収穫物の商品性を落とせば、結果的に高い防除となります。

薬剤価格だけでなく、作物の生育段階、出荷時期、気象条件まで含めて判断することが重要です。

銅剤はどのような人に向いているのか

  • 細菌病の予防対策を考えている人
  • 病気が出る前から予防中心で防除したい人
  • 防除コストを抑えたい人
  • 耐性リスクを考えたローテーションを組みたい人
  • 農家の防除体系へ保護殺菌剤を取り入れたい人
  • 家庭菜園で登録農薬を適切に使いたい人

一方、すでに病気が大きく広がり、散布後に病斑が消えるような治療効果を求める場面では、銅剤だけでは対応できない可能性があります。

銅剤で薬害を出さないためのポイント

銅剤の薬害を完全にゼロにすることはできませんが、散布条件を整えることでリスクを下げることはできます。

  1. 作物と対象病害に登録があるか確認する
  2. 希釈倍数と散布液量を守る
  3. 収穫前日数と使用回数を確認する
  4. 作物の生育段階と葉の硬さを確認する
  5. 朝露が乾いてから散布する
  6. 散布後に薬液が適度に乾く時間を確保する
  7. 高温や強い日射が予想される条件を避ける
  8. 夜露が出る直前の夕方散布を避ける
  9. 弱った株や根傷みのある株への散布は慎重にする
  10. 葉先から薬液が滴るほどの過剰散布を避ける
  11. 酸性の農薬や資材との混用可否を確認する
  12. 展着剤の種類と加用量を確認する
  13. 初めて使う作物や品種では小面積で確認する

銅剤は、病気が発生してから慌てて使うのではなく、感染条件が整う前に使用することが基本です。

降雨、強風や雹による傷、整枝や収穫作業による傷、周辺圃場での発病などを確認しながら、病原菌が侵入する前に作物表面を保護します。

まとめ 銅剤は病原菌を葉の表面で待ち伏せする農薬

銅剤は、昔から使われてきた代表的な殺菌剤です。

葉や茎の表面に付着した銅化合物から銅イオンが溶け出し、病原菌の酵素、たんぱく質、細胞膜などに作用します。

その結果、胞子の発芽、菌糸の伸長、細菌の増殖を抑えます。

銅剤の大きな特徴は、糸状菌だけでなく、細菌病にも使用できることです。

ただし、作物内部へ深く浸透して病原菌を治療する薬ではありません。

病原菌が作物内部へ侵入する前に、葉や茎の表面で待ち伏せして感染を防ぐ保護殺菌剤です。

水酸化第二銅、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、有機銅では、銅イオンの殺菌力そのものが違うというより、銅イオンを葉面でどのように保持し、どのくらいの速さで供給するかが異なります。

また、水分は銅剤を働かせるために必要ですが、葉面のぬれが長時間続くと、作物も銅イオンにさらされ続けます。

銅剤の防除効果と薬害は、どちらも銅イオンの作用によって起こります。

散布後に一度しっかり乾かすことで、薬害リスクは下げやすくなります。しかし、その後の雨や朝露で再びぬれれば、葉面に残った銅剤から銅イオンが放出されます。

昔から使われているから安全、銅剤なら何にでも使えると考えず、農薬登録、製品ラベル、混用情報、散布時の天候を確認してください。

銅剤の特徴を生かすポイントは、病気が広がる前に、予防剤として使うことです。

今後は、水酸化第二銅、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、有機銅について、それぞれの特徴、代表的な農薬、薬害の違いを詳しく紹介していきます。

参考資料

・ピシャっと効かせる農薬選び便利帳 岩崎力夫

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