防除スキル図鑑(殺菌剤) ストレプトマイシンとは?(アグレプト液剤)作用機作・得意な病害・使い方を解説

防除スキル図鑑
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軟腐病が出たから、アグレプトを散布すれば治るのでしょうか?

ストレプトマイシンは、病気が出てから使う薬なのでしょうか。?

こんにちはチーパパです。

抗生物質という名前は聞くものの、畑の中でどのように働いているのかは、意外と分かりにくいものです。

結論からいうと、ストレプトマイシンは、すでに腐敗した組織を元の状態へ戻す薬ではありません。

病原細菌が増殖するときに必要なタンパク質合成を妨げ、菌の増殖や感染の広がりを抑えるために使われる殺菌成分です。

そのため、腐敗が大きく進んでから慌てて散布するよりも、病原細菌が侵入しやすい条件を予測し、感染前から発病初期に防除体系へ組み込むことが重要です。

防除スキル図鑑では、ストレプトマイシンを、派手に病原菌を吹き飛ばす攻撃役ではなく、畑の上に青い結界を張り、病原菌の増殖を静かに封じる防衛術師として紹介します。

ストレプトマイシンとは

ストレプトマイシンは、農業用殺菌剤に使用されている抗生物質系の有効成分です。

主に対象となるのは、細菌によって引き起こされる病害です。
代表的な製品例には、ストレプトマイシン硫酸塩を有効成分とするアグレプト液剤があります。

アグレプト液剤は、農薬登録上ではストレプトマイシン液剤に分類される殺菌剤です。ただし、ストレプトマイシンを含む農薬には液剤や水和剤などがあり、商品ごとに登録作物、対象病害、希釈倍数、使用時期、使用回数、使用方法が異なります。

成分名が同じだからといって、すべての商品を同じ条件で使用できるわけではありません。

また、一般に殺菌剤と呼ばれる農薬の中には、糸状菌、いわゆるカビの仲間を対象とするものが数多くあります。ストレプトマイシンは、それらと同じように何にでも使える殺菌剤ではなく、主に細菌性病害を対象とする成分です。

なお、農業用農薬として使用するストレプトマイシンと、人の病気に用いられる医薬品は混同しないでください。農作物には、農薬として登録された製品を、ラベルに記載された方法で使用します。

防除スキル図鑑で見るストレプトマイシン

項目 カード情報
カード名 ストレプトマイシン
代表商品例 アグレプト液剤
分類 抗生物質系殺菌剤
FRACコード 25
系統 グルコピラノシル抗生物質
スキル属性 病原菌タンパク封印属性
戦闘タイプ 予防・感染初期対応型
主な役割 病原細菌のタンパク質合成を妨げ、増殖を抑える
得意な場面 感染前から発病初期までの細菌病対策
苦手な場面 腐敗が進行した株や組織の回復
編成上の注意 同じ作用機作の薬剤を連用しない

ストレプトマイシンの作用機作

病原細菌も、生きて増殖するためにはタンパク質を作る必要があります。

タンパク質は、細菌の体を構成したり、生命活動を維持したりするために欠かせません。その製造を担う装置がリボソームです。

ストレプトマイシンは、病原細菌のリボソームに作用し、タンパク質合成を正常に進めにくくします。

必要なタンパク質を正しく作れなくなると、病原細菌は増殖しにくくなります。その結果として、作物の上で病原細菌が急激に増え、感染が広がっていく流れを抑える働きが期待されます。

防除スキル図鑑で表現するなら、黄色い属性核が回転し、病原菌のタンパク質製造コードをロックするイメージです。

ただし、ストレプトマイシンを散布すれば、圃場内の病原細菌が完全に消滅するわけではありません。

薬剤が十分に付着していない場所や、すでに腐敗が進んでいる組織では、期待する効果を得られないことがあります。散布後の降雨、気温、感染圧、作物の状態、耐性菌の有無などによっても結果は変わります。

スキル名 タンパク封印結界

ストレプトマイシンの防除スキル名は、タンパク封印結界です。

防衛術師が手をかざすと、青い液滴がばれいしょ畑やたまねぎ畑の上へ広がります。

胸元の黄色い属性核が回転し、作物へ近づく半透明の病原細菌を捉えます。病原細菌の周囲には、シアンブルーの輪によるコードロックが展開されます。

コードロックを受けた病原細菌は、増殖に必要なタンパク質を正常に作りにくくなります。細菌の増殖速度が低下し、茶色の感染雲や黒褐色の病斑粒子が、周囲へ広がりにくくなっていきます。

最後に、畑全体を覆う青い防衛フィールドが形成され、病原菌密度と感染圧を小さくするための防衛線が敷かれます。

これは作用機作を理解しやすくするための比喩です。実際の防除では、薬液が作物へ適切に付着し、登録された時期と方法で使用されることが前提となります。

ストレプトマイシンが得意とする病害

ストレプトマイシンは、主に細菌性病害を対象とする成分です。

農薬登録では、製品と作物の組み合わせにより、軟腐病、黒腐病、腐敗病、せん孔細菌病、かいよう病、そうか病、黒あし病などが対象となる場合があります。

ただし、ここに挙げた病害なら、どの作物にも使用できるという意味ではありません。

例えば、ある商品が特定の作物の軟腐病に登録されていても、別の作物の軟腐病には登録がないことがあります。同じ病名であっても、作物名まで一致していることを確認しなければなりません。

病害の種類 病原体 代表的な病害 ストレプトマイシンの役割 薬剤選定時の注意点
細菌病 病原細菌 軟腐病、黒腐病、腐敗病、せん孔細菌病など 登録がある作物と病害では、病原細菌の増殖抑制を担う 作物名、病害名、使用方法を商品ラベルで確認する
糸状菌病 カビに近い病原体 べと病、灰色かび病、白斑葉枯病など 基本的に別の作用機作を持つ殺菌剤を検討する 殺菌剤という分類だけで選ばず、病原体に合う薬剤を選ぶ
ウイルス病 植物ウイルス モザイク病、黄化萎縮病など 感染した植物体内のウイルスを治療する役割はない 媒介虫防除、健全苗、発病株対策などを組み合わせる

農薬選びでは、病名が似ている、殺菌剤と書いてある、といった理由だけで判断しないことが大切です。

細菌性病害を狙って防除したい人におすすめ

アグレプト液剤は、軟腐病などの細菌性病害を狙って防除したい人に向いている薬剤です。銅剤などが作物表面を覆い、病原菌の侵入を防ぐ予防型の防除を得意とするのに対し、アグレプト液剤はストレプトマイシンが病原細菌のタンパク質合成を妨げ、増殖を抑えるという異なる作用を持っています。

10a当たりの使用コストを計算してもコストを抑えやすい剤です。

銅剤とは作用機作が異なるため、細菌病対策の選択肢を増やしたい人や、同じ薬剤に偏らないローテーションを組みたい人にも検討しやすい一剤です。ただし、使用前には必ず最新ラベルを確認し、登録作物、対象病害、希釈倍数、使用回数を守ってください。

ストレプトマイシンは発病後でも効くのか

ストレプトマイシンは、病原細菌の増殖や感染拡大を抑えるために使われます。

しかし、すでに軟化した組織や、褐変して腐敗した部分を、散布によって健康な状態へ戻すことはできません。

発病株へ散布しても、傷んだ葉や球、いもが見た目に回復するとは限らないのです。

細菌性病害の防除では、病原細菌が大量に増えて腐敗が進んだ後よりも、感染前から発病初期の対応が重要です。

高温、多湿、まとまった降雨、強風、雹、土寄せ、中耕、収穫作業などは、細菌が侵入しやすい条件や傷口を作る原因になります。

また、アザミウマ類やヨトウムシ類などの食害によって生じた傷が、病原細菌の侵入口になる場合もあります。

このような危険条件を把握し、防除が必要な作物と病害に登録された薬剤を、適切な時期に使用することが基本です。

発病株が確認された場合は、薬剤散布だけで終わらせず、発病株の除去、排水改善、害虫防除、作業による傷の軽減なども検討します。

病気が出てから薬剤だけで何とかしようとしても、すでに感染が圃場内へ広がっていれば間に合わないことがあります。細菌病防除は、病斑を見てから始めるのではなく、感染条件を読むところから始まります。

軟腐病防除では薬剤だけに頼らない

軟腐病菌は、作物の傷口や弱った組織から侵入しやすい性質があります。

そのため、ストレプトマイシンを含む薬剤だけではなく、病原細菌が侵入しにくい圃場環境を作ることが重要です。

圃場の排水を改善する

圃場に水がたまり、作物周辺の湿度が高い状態が続くと、軟腐病が広がりやすくなります。明渠や排水路を確認し、大雨後に水が停滞しないように管理します。

窒素を過剰に与えない

窒素が多すぎると、作物が軟弱に生育し、組織が傷みやすくなる場合があります。生育量だけを追いかけず、土壌診断や作物の状態に合わせて施肥します。

作業による傷を減らす

中耕、土寄せ、除草、収穫、調製などの作業では、葉や茎、球、いもを傷つけることがあります。高温時や降雨直後など、感染しやすい条件での作業にも注意が必要です。

害虫の食害を抑える

害虫の食害痕は、病原細菌の侵入口になる可能性があります。軟腐病対策と害虫防除は別々の作業に見えますが、実際にはつながっています。

発病株を放置しない

腐敗した株を圃場内へ放置すると、病原細菌の供給源になる可能性があります。発病状況を確認し、必要に応じて周囲へ広げないよう適切に処理します。

薬剤散布は、これらの管理と組み合わせて初めて意味を持ちます。

使用するときの注意点

登録作物と対象病害を確認する

同じストレプトマイシンを含む商品でも、農薬登録の内容が同じとは限りません。

使用前には、商品名、作物名、対象病害、希釈倍数、使用液量、使用時期、使用回数、使用方法を確認してください。

使用回数は成分単位でも確認する

農薬ラベルには、本剤の使用回数だけでなく、ストレプトマイシンを含む農薬の総使用回数が記載されています。

商品名を変更しても、同じ有効成分を含んでいれば使用回数へ通算される場合があります。商品名だけを見て、別の薬へ切り替えたと判断しないようにしましょう。

散布時期を逃さない

病原細菌の増殖を抑える成分であっても、腐敗が大きく進んだ株を元へ戻すことはできません。

病害の発生条件、過去の発生状況、天候、作業予定などを確認し、登録範囲内で感染前から発病初期に使用することが基本です。

同じFRACコードを連用しない

ストレプトマイシンのFRACコードは25です。

同じ作用機作の薬剤を繰り返し使用すると、感受性の低い病原細菌が選抜され、薬剤が効きにくくなるリスクが高まります。

商品名ではなく、有効成分とFRACコードを確認し、作用機作の異なる薬剤を防除体系へ組み込みます。

混用は必ず確認する

液肥、銅剤、他の殺菌剤、殺虫剤などと混用する場合は、商品ラベル、メーカーの混用事例、技術資料を確認してください。

有効成分同士に問題がなくても、製剤、希釈水、液肥成分、散布液のpHなどによって、沈殿、分離、薬害が生じる可能性があります。自己判断でタンクへ次々に投入するのは避けます。

収穫前日数と使用時期を守る

作物によって、収穫何日前まで使用できるかが異なります。

散布だけでなく、種いも処理、樹幹注入など、使用方法が異なる登録もあります。必ず使用する商品の最新ラベルに従ってください。

薬剤耐性に注意

病原細菌の集団には、薬剤への感受性が同じではない個体が含まれることがあります。

ストレプトマイシンを繰り返し使用すると、影響を受けにくい細菌が生き残り、その割合が増える可能性があります。

FRAC資料でも、ストレプトマイシンでは耐性が確認されており、耐性管理が必要とされています。

耐性菌対策では、次の点が重要です。

  • 同じFRACコード25の薬剤を連続して使用しない
  • 作用機作の異なる登録薬剤とローテーションする
  • 必要性の低い散布を繰り返さない
  • 排水改善や発病株管理などの耕種的防除を組み合わせる
  • 害虫や作業傷など、病原細菌の侵入口を減らす

防除スキル図鑑でいえば、耐性菌対策は、貴重な防衛術師を長く編成に残すための管理です。

不安だから毎回入れておく、という使用方法では、必要な場面で力を発揮しにくくなる可能性があります。

ストレプトマイシンのカード評価

評価項目 評価 解説
対応幅イメージ 3/5 細菌性病害では重要な選択肢ですが、糸状菌病やウイルス病を含むすべての病害に対応するわけではありません。
初動火力イメージ 2/5 すでに進行した腐敗を一気に治す薬ではなく、感染前から初期の増殖抑制を担います。
持久力イメージ 3/5 散布後の効果は、降雨、気温、付着状況、病原菌密度などに左右されます。
潜入力イメージ 2/5 商品ごとに剤型や使用方法が異なるため、成分名だけで浸透性が高いとは断定できません。
編成注意度 4/5 同一系統の連用による耐性菌リスクを考え、作用機作の異なる薬剤と組み合わせます。
ラベル確認重要度 5/5 作物、対象病害、希釈倍数、使用時期、使用方法、回数が商品ごとに異なるため、確認は必須です。

ストレプトマイシンが向いている場面・向いていない場面

向いている場面 向いていない場面
登録のある細菌性病害の発生が心配される時期 腐敗が大きく進んだ株を元に戻したい場面
降雨や高温多湿により感染リスクが高まる場面 病原体を確認せず、とりあえず散布する場面
傷ができやすい作業や気象条件の前後 糸状菌病やウイルス病へ何となく使用する場面
発病初期の感染拡大を抑えたい場面 同じ作用機作の薬剤を何度も繰り返す場面
防除体系に細菌病対策を組み込みたい場面 登録作物や対象病害を確認していない場面

本記事は農薬成分の特徴や作用機作を分かりやすく紹介することを目的としています。実際に農薬を使用する際は、必ず使用する商品のラベルと農薬登録情報を確認し、適用作物、対象病害、希釈倍数、使用時期、使用回数、収穫前日数を守ってください。

よくある質問

ストレプトマイシンは軟腐病を治せますか?

すでに軟化、腐敗した組織を健康な状態へ戻す薬ではありません。

登録のある作物と病害に対し、病原細菌の増殖や感染拡大を抑える目的で使用します。発病株の除去、排水改善、傷の防止、害虫防除なども組み合わせてください。

アグレプト液剤はすべての野菜に使えますか?

すべての野菜に使用できるわけではありません。

使用できる作物、対象病害、希釈倍数、使用時期、使用回数は農薬登録によって定められています。必ずアグレプト液剤の最新ラベルと農薬登録情報を確認してください。

雨の前と後では、いつ散布しますか?

細菌性病害では、感染前から発病初期の防除が重要です。ただし、実際の散布時期は、対象作物、病害、登録内容、天候、散布後の降雨予報を考慮して決めます。

散布直後に強い雨が予想される場合や、降雨後に再散布を検討する場合は、ラベル、メーカー、地域の防除指導機関などへ確認してください。

銅剤と一緒に使えますか?

商品ごとに混用可否を確認する必要があります。

ストレプトマイシンと銅成分という組み合わせだけで判断せず、使用する製品同士の混用事例、ラベル、メーカー資料を確認してください。液肥も同時に混ぜる場合は、さらに沈殿や薬害のリスクが変わるため、自己判断で混用しない方が安全です。

毎回ストレプトマイシンを使ってもよいですか?

毎回同じ作用機作を使用する防除体系は避けます。

耐性菌対策として、FRACコード25の連用を避け、対象病害に登録された作用機作の異なる薬剤とローテーションします。薬剤以外の防除方法も組み合わせてください。

殺菌剤なら、べと病や白斑葉枯病にも効きますか?

殺菌剤という分類だけでは判断できません。

べと病や白斑葉枯病などは、細菌病とは異なる病原体によって起こります。病害を診断し、その作物と病害に登録された薬剤を選ぶ必要があります。

まとめ

ストレプトマイシンは、主に細菌性病害を対象とする抗生物質系の殺菌成分です。

  • FRACコードは25
  • 病原細菌のリボソームに作用する
  • タンパク質合成を妨げ、細菌の増殖を抑える
  • 進行した腐敗組織を元へ戻す薬ではない
  • 感染前から発病初期の使用が重要
  • 軟腐病対策では排水、傷の防止、害虫防除も必要
  • 同じ作用機作の薬剤を連用しない
  • 使用前に最新の農薬登録と商品ラベルを確認する

ストレプトマイシンは、派手に病斑を消し去る攻撃役ではありません。

半透明の病原細菌が畑へ広がる前に青い防衛フィールドを展開し、タンパク質を作る仕組みへコードロックをかける防衛役です。

発病してから頼る最後の一撃ではなく、感染条件を読み、適切な時期に防除体系へ配置することで力を発揮する。それが、防除スキル図鑑におけるストレプトマイシンです。

参考資料

  • 農林水産省 農薬登録情報提供システム「アグレプト液剤」登録番号第13823号
  • Fungicide Resistance Action Committee「FRAC Code List」
  • Fungicide Resistance Action Committee「Mode of Action of Fungicides」
  • 三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社「アグレプト液剤」製品情報
  • 島根県農業技術センター 病害虫データベース「軟腐病、黒腐病」

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